■2003年3月の日記

3月24日 Mon 劇場入りしました

 今日から劇場入り。家を出ようとした矢先当日パンフに重大なミスを発見する。スーパー演出助手、鈴木典子ちゃんの名前を入れ忘れていたのだ。喚き散らしながらパソコンの電源を入れ、詫びながら入力し、泣きながら出力するも、敢え無く数分の遅刻。せっかく6時前から起きて最後の校正をしたのに。
 優秀なスタッフに支えられ、客演陣は6時に解散。紗夢嬢と増田さんはペンギンプルペイルパイルズを見に行くという超余裕の行動。悩みのタネだった衣裳や小道具もほとんど揃い、スズナリには昨日までシャンプーの本番だった福田さんの手による無機質な空間が拡がっております。最後は明かりのデータ作りにつきあいつつ、愛ちゃんのとあるシーンの猛特訓。おかげでなにかをつかんだ様子の愛ちゃん。この芝居、まだまだ化けますわよ。

3月24日 Mon 最後の稽古

 ここにきてファーストシーンの松岡の演技を全部組み替える。松岡がいけないのではなくて数日前に吉川の演技を組み替えたら、どうにもそぐわない場所が出てきたので、細かく演出替え。最初についていた演出とはまるきり矛盾する指示に松岡もよく応えてくれ、シーンは生き生きしたものに。なるほどね。
 そう言えば今日はぴあの71ページにどーんと記事が載ったのであった。ライターの方がステキな記事を書いてくださったのでとてもうれしい。記事負けしないようにがんばらなくては。
 最終の通しをして稽古場をお掃除して解散、のハズがついつい森本夫婦(イズミくんとマツオカさん)と飲みに行ってしまいましたとさ。どんとはれ。

3月23日 Sun アメ横に敗退する

 今日はとある小道具を探しにアメ横に。しかし、勝手わからぬアメ横で、右往左往するも収穫はなし。体力を消耗し、アメ横の恐ろしさを実感する。しかし、ここまで切羽詰っても、せっかくアメ横まできたのだからとフラジャイルのために軍服の中田商店で軍モノ関係を物色するワタクシ。中田商店はこの戦争の真っ最中だと言うのに、軍服マニアっぽい人で溢れていた。なんとはなしにコワイ。
 通し稽古はここまででいちばんのデキ。明日で稽古も終わり。連日開業していたイズミンバーも本日で閉店。いいものにしますよ。ぜったいにね。

3月22日 Sat なにをしていたものか

 毎日、前日の通しで気になったところと通しを踏まえて新しい演出を付加したところを返してから、7時45分、夜の開演時間にあわせて通し。この繰り返し。どんどん進化する様が自分の芝居ながら毎日ビックリするよ。俳優が、いや、また俳優のことなんだけどさ、昼間の返し稽古をキッチリ取り込んだうえで、さらに通しでしか為し得ない身体のありさまを見せつけてくれるのが、ほんとうにスリリング。おもしろいよ。この現場。超エキサイティング。

3月21日 Fri 計画性には自信があったがまだ衣裳さえ揃っていません

 稽古前に下北に行ってイズミくんの衣裳を買う。イズミくんは意外に××であることが発覚した。しかしこれは彼のイメージにも関わるため、社外秘ということに。
 稽古はもう細かすぎて驚くくらい細かく。今回は、演出の仕事の大切さを俳優に教えてもらっている現場である。てゆうか、「わたしってもしかしていい演出家?」などと誤解しそうになるくらい、演出をつければつけるほど芝居が良くなっていくのだ。演劇の稽古のラスト2週間の変化のダイナミズムはこれはもう体験した人でないとわからないものだが、よくなる芝居のときはそういう劇的な瞬間が何度も訪れる。ダメなときはどこまでも停滞し、汚らしい稽古場ができあがる。今回は、うつくしい、と思う。たぶん。おそらく。なんかね、演出なのにファンになっちゃうんだよね。俳優たちの。呑気な演出家で申し訳ないと思いつつ、今日の日記はこれにておしまい。

3月20日 Thu 今日の日記はお休みします

 理由はあなたにだってわかるはずだ。

3月19日 Wed スタッフ総見

 早出で姉妹ふたりの稽古をしたが、ほかの人の集合時間になっても終わらずまだやり続ける。アップしてから続き。ラストに向け、やってもやってもまだ終わらない。だけど昨日シャンプーを見た今日だもの、絶対妥協しない。芝居作りは体力さ。そして今日はスタッフが全員来ての通し稽古が予定されているのだ。なので、7時過ぎに切り上げ、通しの準備。そして、2回目の通し。
 終了したとき、期せずしてスタッフさんから口々に、「これは凄い芝居だねえ」と声があがる。長年芝居をやっているけど、こんなこと初めてだ。だいたいウチのスタッフって歴代辛口トークだし。とは言え、詩森は「痛くて切ない芝居」を作っているつもりだったのだけど、スタッフの感想をとりまとめると「怖いくらいに凄まじい芝居」ということであるらしい。狙いとはかなりずれている。所詮そのへんがわたしの限界というものか。無念である。とはいえスタッフの評判がいいのは嬉しいものだ。多少の高揚のなか、ノリちゃんの卒業祝いと称して飲み、「今日はここに泊まる」とダダをこねる泥酔王イズミくんを引っ立てるようにして、帰宅。

3月18日 Tue ナナメとピュアと

 48時間以内に空爆の文字が踊る新聞を横目で睨みながら、下北沢スズナリへ、ザ・シャンプーハットを見に行く。詩森がどーしてもシャンプーを見たかったのと、俳優の疲れがピークのこのあたりで一度休みを入れてみてはどーだろう、というアイデアによるものだが、なぜかリリちゃん以外の全員がスズナリに集合するハメに。
 せっかくこの時期芝居を見るなら衝撃的におもしろいか、これ以上ないほどつまらないかどっちかにしてほしいものだが、今日のシャンプーは圧倒的に前者であった。もうね。ほんとにステキだった。シニカルで毒のある視点と狂気と優しさとピュアさが奇跡のように同居した舞台だった。詩森はもうなにがなんだかわからないほど興奮してしまい、作・演出の赤堀さんと握手しながら涙ぐむ始末。こんな舞台はなかなかないので、みんな絶対行ったほうがいい。だってスズナリが割れそうな拍手だったもの。わたしも手が痛くなるほど拍手したよ。詩森の年間ベストアクト間違いなし。そしてゲイ・シーンからではなく登場したゲイ・プレイの傑作でもあり、日本産のゲイ・プレイとしてその成果を誇れるものでもあったと思う。
 ああもう詩森もがんばる。必死でやる。熱く誓う下北の夜であった。でも松岡さん、せっかくのオフの日に終電逃してウチに泊まりに来るのはやめてください。

3月17日 Mon 増田さんのお手柄

 出道具の搬入をしてから俳優待ちつつ、最後のDM作業。投函。みんな来ておくれ。おもしろいから。たぶん。
 一箇所、どうしてもよくならない箇所があって、今日はノリちゃんがいないので「どーしたらいいかなー」と、堂々と俳優に聞く詩森。そしたら増田さんが超ナイスなご進言をしてくれた。そのとおりやってみたら、当社比10倍くらいでシーンが良くなった。役にたつ演出のキャリアのある俳優。そして役にたたない家畜演出家詩森。そして、当初「マリックが必要なのでは」と言われていたシーンに、ちょっとしたアイデアが浮かび実験。イリュージョンではまるきりないけど、これでイケルかも、と思う。あとは練習あるのみね。こーして「違いのわかる男」増田さんの活躍で、スーパー演助ノリちゃんのいない稽古場を乗り切った風琴工房であった。

3月16日 Sun 永代リバースポットは永代橋のたもとです

 一日稽古。頭から、シーンが良くなるまでそのシーンを繰り返すという気力勝負の稽古。
 最近は最終ジャッジは演助のノリちゃんが行っている。いや。演出は詩森がやっているんだけど、最後に必ず「どうかな。ノリちゃん」と聞いてしまうのだ。で、ノリちゃんが「いいと思います」と言ってくれると、なんとなく安心して次に進むという、じつに頼りになる演出助手というか、実に頼りない演出というか。それが証拠に明日ノリちゃんが卒業式で欠席だとわかったとたん、俳優たちにビミョーな動揺が広がっていた。泉くんにははっきりと「明日は稽古になるんですかね」と言われたくらいだ。そんなノリちゃんは袴姿で総代として挨拶をするらしい。やはり気のせいではなく優秀なのだ。
 はあ。それにしても一日稽古でさえ一瞬で終わってしまうものだよ。

3月15日 Sat 永代リバースポットは門前仲町にあります

 今日から門前仲町なので、積み込みに来てくれた愛ちゃんとワゴンタクシーで稽古場入り。搬入の際、なぜか運び込まれる米やお酒を管理人の小里氏に見咎められ、「あんたたちはいったい何をしにきたんだっ!」と怒られる。だからこなくてもいいって言ったのに。何度も使っているんだし、春からはわたしたちも家賃を払う稽古場なんだし。でも怒りながらも「お米足りる?あげるよ」と言ってくれた。なんていい人なんだ。
 でもって稽古。最初は昨日の通しを踏まえ、俳優と問題のあった箇所の話。ふむふむ、なるほどそーゆーことがつっかかりの原因だったのね。話してみないとわからないものね。でもって昨日いちばんダメダメだった箇所を時間をかけて返し、夜は今回初めての通し稽古。ここのところの風琴初通しとしては出色のデキだったのではないだろーか。だからと言って最高っていうんではなくて、ほら、なんて言うの?ウチの初通しって、アタマ抱えるようなデキなことが多いから。ここからあと1週間以上、しかも昼夜稽古で詰められるのかと思うと、ちょっといいかも。がんばーりまーすよー。

3月14日 Fri ようやく個人DMが完成しました

 昨日の自主練習のことを聞いたら、とてもみんな楽しかったらしい。まあ、俳優同士のコミュニケーションのための自主稽古だからいいんだけど、ちょっぴりさみしいワタクシ。
 返し稽古をしてから、後半通し。これがしかしどうしよう、というデキ。しかし俳優の抱えてる問題がはっきり見えた稽古でもあったので、明日からの稽古でやるべきことがクリアにはなった。
 稽古終了後は見学にきた天ロボのノリちゃんと票券管理、山田氏を交え台湾小皿料理の店へ。あっというまに週末だよ。明日からは門前仲町の稽古場。やるわ。

3月13日 Thu 美食の館の木曜日

 今日は稽古はあるが自主稽古にして、戯曲の勉強会@齋藤憐さん宅。憐さんの戯曲の批評は滅法厳しいが、自ら腕を振るう料理がものすごく美味しい。なので美味しい、美味しい、と食べていると、「お前らのこんなくだらない戯曲を読むためにこの料理を作ってるワケじゃないっ!!」と叱られた。まあ、それはもっともなんだけど、料理にはホラ、罪はないから。とは言え、次はたぶん詩森が「白痴」のプロットを出すことになると思うので、真剣に取り組まなくちゃね。などと思いながら、牛タンの塩漬けやら温野菜のアンチョビディップやらを人の倍くらいは食べているワタクシ。なにせこのために昼ゴハンから調整してますからね。稽古休むなんて何年ぶりかわからないくらいだけど、なんかリフレッシュしたわ。明日からまたがんばろー。そんな木曜日。

3月12日 Wed ある恋のおわりを思う水曜日

 稽古はオフだが、フラジャイルの稽古に行く。うちの芝居もたいへんだけど、こっちの芝居はもっとたいへん。なんと言っても時代モノだから、俳優の重心から声から作り変えていかないとできないよね。稽古はちょうど一ヶ月目。テキストを離しての立ち稽古に入ってた。本番前にこちらにこれるのはこれが最後。いちばん面白い3週間あまりに立ち会えないのはほんとうに残念だわ。
 稽古後は幸太郎くんの家でプロモーションビデオをマッキントッシュでも見られるように作業。いやーん。もうマックなんてぜんぜんわかんなーい。ウェブ用のファイルまではなんとか作ったけど、ftp(ウェブにアップするためのソフトね)がどーしても作動しなくて諦める。
 稽古場から幸太郎宅、そして幸太郎宅から詩森家は幸太郎くんのバイクで送ってもらったんだけど、バイクのタンデムって、なんと10年ぶりくらい。詩森の恋人って歴代どーゆーワケか車の免許がない人なんだけど、たったひとりだけバイク乗りがいて、その子と付き合ってたときはいろんなところにバイクで行ったっけ。そして恋が終わりフルフェースのヘルメットが残ったんだよなあ。しかし幸太郎くんは生粋のバイク乗りらしくタンデムでさえ80キロ近く出すので、感慨に浸る余裕もなく、深夜3時、帰宅。そんな水曜日。

3月11日 Tue 眠亭のニラ炒めが美味な火曜日

 今日は小里くんといっしょに「ぴあ」へ。フラジャイルのご紹介で行ったのだけど、担当のMさんに「稽古佳境じゃないんですか?」と呆れられる。ええまあ佳境なんですけど、ない余裕を歯磨き粉の最後みたいにギュウっと搾り出して生きているワケですよ。毎日。そしてない余裕を振り絞ってさらに「桃唄309」の挟み込みへ。ようやく稽古。
 何とかしてください、と俳優に申し渡したラスト付近のシーンだが、演出も何の策もないというのではあんまりなので、今日はリーディングから開始。もう暗記しているシーンだけど、テキストを持って、何度も読む。少しづつドラマリーディングの要素を入れながら、読む。期が熟したところで立ち稽古。スルスルスルっとラストまで通った。さあいよいよ通し稽古だわ。とは言え、今回は衣裳がきまらない。それもこれも森本夫妻(泉くんと松岡)がお金持ちという設定の役だからだ。勝手な希望だけ述べると、ふたりでガリアーニ(ディオールね)かゴルチェのオートクチュールでも着ていてほしい気分なのね。そうなってくると靴だって時計だって松岡が取り出す化粧ポーチだって並大抵のものでは許されない。で、そーゆーのって演劇人にはいちばん難しいジャンルじゃありません?これ読んでいる方でちょっとどうかと思うような趣味のお金持ちの親戚とかいたらぜひご紹介くださいませね。それにしても毎日毎日、稽古がアッというまだよ。この倍くらい練習したいよ。今回の稽古はほんと飽きない。見に来たほうがいいと思うよ。などと控えめに宣伝して今日の日記はこれでおしまい。

3月10日 Mon 池尻大橋にチェーン店の居酒屋がない理由

 今日は池尻大橋にある稽古場。なかなか停滞した稽古の一日。業を煮やした泉くんが演技指導をしてくれるのはいいが、そのついでに演出にまでひっそりケチをつけられた。しかし、そのほうがよくなりそうだったので、あっけなくその意見を取り入れる詩森。いわゆるノンポリ。しかしシーン自体は停滞したまま稽古終了。俳優に明日までになんとかするように、と申し渡し、今日は全員で呑みに行く。しかし池尻にはチェーン店の安い居酒屋がなく、奄美大島の郷土料理を出す赤ちょうちんへ。ここがけっこうアタリで美味しい。身の厚いフカフカのホッケ。美味しかったわ。

3月9日 Sun ちいさなイベントを

 風琴工房では3月29日土曜日のソワレ終了後、「朗読」を行うことに致しました。アメリカのイラク攻撃が始まらんとしていることを踏まえてのものです。反戦を謳うものではなく「戦争について考える時間を持ってほしい」という願いのもとに行うものです。詳細は近日中に。
 今日は午前中、ぴあから電話取材をいただく。ライターの方はしっかりした考え方のある方で話していてとても面白く、取材という範疇を越えて話こんでしまった。3月24日発売のウィークリーぴあに掲載予定。ぜひご覧下さい。そののち、稽古。今日はラストまで。たいへんだろーなーとは思っていたけど、やっぱりたいへんだ。エモーショナルでありつつ、周到に計算していかなくてはならないシーンが続く。俳優の負担はいかばかりか。演出する側も全力で臨まなければ。気力勝負の最後の2週間が始まる。

3月8日 Sat 奇跡のドラマティックリーディング

 今日はreset-N主催のリーディング公演「re−vo」に行った。これは4つの団体が夏井戯曲を読むっていう企画なんだけれど!!今日は三条会。利賀の演出家コンクールで最優秀賞を取った関さん率いる千葉の集団である。これがさ、もう、なんていうの、ドびっくりの面白さだったんだよね。俳優のうまさも群を抜いているけど、ここまで「演出とはなにか」っていうのが如実にわかる公演っていうのもあまりないと思ったよ。すごい。すごいよ。三条会。お勉強させていただきました。白旗。降参。ここまで「参った」という気持ちになるのは、ここ数年では、シャンプーハットの「蝿男」。そして、KUDANプロジェクトの「真夜中の弥次さん喜多さん」くらい。凄かったなあ。
 いっしょに行った愛ちゃんと興奮のあまりギャーギャー喚き散らすように三条会の話をしながら稽古場へ。そして稽古。今日は後半を細かく作ってから、前半部分の通し。うん。リズムが悪くてノレないかんじはあったけど、第一段階はクリアかな。いつもそうありたいと思って叶わなかったうつくしい稽古場がここにある。才能の煌きでは三条会にはまるで敵わないけど、風琴工房も地道にやっていくわ。

3月7日 Fri めでたいひと

 今日も稽古は白熱。で、帰りにまた飲んでいたら、スズナリの支配人の話になり、松岡が、「Fさんに横浜であったら、『松岡さん、今回ステキらしいですね』って言われたー」と言うので、「え、誰がそんなこと言ってたの」と聞いたら「詩森さんって言ってたよー」と答えが返ってきてドびっくり。自分トコの俳優をしかも借りる劇場の方に、呑気に褒めるなんてどうかしているんじゃないか。ぜんぜん忘れてたよ。そんなコト言ったの。まあでも昔から「褒め言葉は人づてに伝わるほうがよい」って言うよね。演出家としての策略、策略。そんな松岡は明日美容院に行って来るらしい。「どんなふうにすればいいかなあ」と言うので、「叶姉妹みたいに」と答えておいた。果たしてどうなることやら。

3月6日 Thu 増田くんも紹介しておきましょう

 増田くんの稽古場日記はあまりに面白いが、増田くんの紹介がないので、稽古オフ日記は「役者紹介 増田理」編としてみることに。




増田くんは小さい。154センチメートル。増田くんは痩せている。体脂肪率平均10.5%(増田日記「買ってはいけない」の項より計算。それにしても「平均」ってなんだよ)。増田くんはお酒が飲めない。増田くんは一見謙虚。いつも頭の天辺あたりの髪の毛がぴょんと立ってるので「妖怪レーダーみたいだね」と言ったら、「これ以上伸びないんですよ。この長さが限界で、あとはさよならーって抜けちゃうんです」と寂しげに笑ってみたりする。これだけ書いても、演技以前に俳優としてオイシイ見た目の持ち主だということがわかるであろう。そのうえ、演技もうまいのなんの。さらに才能ある劇作家でもあるらしい。ただひとつ問題は意外なほどに「乙女度」の高いその性格である。「精露路」では新鮮に舞台で出会えるよう、「セルロイド」のあいだは別の場所で過ごしていたという増田さんと愛ちゃん。それはまあいいけど、だからといって休憩中に「結子(愛ちゃんの役名)と会うのが楽しみなんですよ」と恥ずかしげもなく演出家に遠い目をして告白するのはいかがなものか。その精露路では「さえない役者」とアンケートに書かれたことに激しくショックを受けたらしい。リベンジを誓う今回は前回のステキなお兄さん役とは比べるべくもない「さえない役」です。どうぞおたのしみに。


 でもって今日はフラジャイルの稽古場に行く。美術の長田さん、舞台監督の松下さんと打ち合わせ。ああ今日も冷たい雨が降っていたわ。

3月5日 Wed かなしいできごと

 話題の「浮標」をZ席狙いで行ったら、詩森のひとり前の人で売り切れやがった。くうううう。おりしも晴れ渡った気持ちのよい日。青空を見上げつつトボトボ帰り、劇団仕事。いいんだ。仕事いっぱいあるし。
 今日が卒業式のりりちゃんは可愛い縦ロールだった。なんでもウェデングドレスを着たそうだ。なんで卒業式にウェデングドレスかは何度聞いても理解できなかった。なぜなんだ。なぜ卒業式にウェディングドレス。そして今日は久しぶりの全員集合。前半部分を通してみる。抜き稽古とぜんぜん違ってエキサイティング。
 さて、念願の飲み会。今回は少人数ながら楽しい座組みである。明日はオフ。でもオフなんていらないから稽古したいよ。

3月4日 Tue 疑惑

 今日も昨日の稽古の続き。泉くんは参加したとたんからハードなことになっている。もっともこの芝居、全編息つく間もなくハードなんだけど。月・火とオフだった長田家をギャフンと言わそうぜと頑張ってみる。ようやく少し形になったところで時間切れ。松岡の風邪は絶好調。なので今日も飲みに行かずに帰る。増田さんの日記でこのことに関する疑惑が書かれていたが、そんなステキなことは何もなかった。ただほんとうは飲みたかった泉くんが、寂しく家用の酒を買って帰っただけである。ちなみにこれがメーリングリストで流された疑惑のメール。



詩森です。
昨日、今日は松岡(酒豪)洋子さんが風邪をひいていたため、
森本一家は飲まずに帰りました。
泉くんと詩森はそうとう飲みたいムードでしたが、
まだ差しで飲む勇気はなく、おとなしく帰ってきました。

そんなワケで泉くんは、帰り際、
「あしたはりりーちゃんの卒業パーティーだよね!!
(だから飲めるんだよね!)」と念押しして帰られました。

松岡も「それに備えて今日は寝るわ!!」と
妙な張り切り方をしていました。

と、ゆーワケで明日はりりちゃんの卒業パーティです。
りりちゃん、だいじょうぶですか?

ではでは。
(このメーリングリストは飲み会の告知用なのか・・・)



読み返すと相当ダメなかんじだね。トホホホ。

3月3日 Mon つめたい雨が

 あれよあれよというまに凄い雨。折込に行った先のスズナリでさんざんお茶を飲んだあげく、傘をお借りしてから稽古場へ。今日は昨日やった泉くんの登場シーンをこれでもかと返す。10分あまりのシーンだが、いくらやってもまだまだやれる、いくらでも詰められるという底なし沼シーンであることが判明。稽古を終えた、松岡が「全編中でいちばん難しいシーンかも」と言った後、「でもなんか全部タイヘンだけどね」とビミョーな笑いを浮かべていた。そんな松岡(酒豪)洋子がめずらしく風邪気味だと言うので、飲みにはいかずに帰る。そう言えば今日は雛祭りだったんだよなあ。

3月2日 Sun あたたかい日

 初の一日稽古。詩森は近所の六行会ホールで折込をしてから稽古場へ。まずはまた半立ちの読み合わせ通し。気づいたらみんなほとんどテキストを離している。今日の稽古場は拡散しやすく難しい空間で、常日頃、ここでいい通しになったらこの上演は成功、と詩森が思っている稽古場なのだが、その高い天井までいっぱいにある空気が満ちていた。演助の典子ちゃんも「今日は昨日とぜんぜん違った」と言っていたので気のせいではないだろう。増田さんとリリちゃんは昼間だけで帰り、ついに泉くんが入っての立ち稽古。さすがにね、6人しか出ないとひとりの比重が大きいんだよね。泉くん演じるところの宏治がいるといないでは、こんなに違うのか、というくらい空間が違う。終了後は「1杯だけ」と言って飲みに行く。しかし1杯で終わろう筈もなく、ボトルまで入り、気づくと終電。稽古のこと、脚本のこと、くだらないこと、熱く語ったわ。なんか泉くんにまたさりげなく脚本の書き直しを要求された気がするが、まあいいか。仕方ないから直すわ。ピンポイントだけどね。

3月1日  Sat 全員集合

 そう言えば昨日はようやくキャストが全員そろった記念すべき稽古なのでもあった。読み合わせ。完成形への遥かな道のりを見せつつも、読み合わせはエキサイティングでおもしろかった。そして久しぶりに「セクシャリティ関連」のレクチャー。今回、登場人物のひとりが性同一性障害者という設定なのだ。体のレベルでは違和感を感じていない、女性装もしていないし、性指向は女性に向かっているのだが、ジェンダー認識は女性で(解剖学的には)男性という登場人物が出てくる。この役を理解するのにはどうしても系統だった性に関する知識が必要となってくるので、かなり時間をとって話をする。現役高校生のリリーちゃんは「知らなかったことがいっぱいです」とショックを受けていたが、よくよく聞くと学校には同性愛者の子やトランスジェンダーの子も多く、わりとおおらかにその情報は公開されていたりするらしい。時代は自由な方向に向かいつつあるのかもね。そして森本家決起集会と称して呑みに行く。泉くんいきなりウィスキーのボトル。そしてなぜか参加の山田さんはいきなり日本酒。ダメーなかんじの飲み会が繰り広げられたのであった。一夜明けた今日は読み合わせ。細かなダメを出しつつ、2回。さすがに今日は呑みに行かずに帰る。いい芝居になりそうな予感がひしひしとするけど、そう思うのはいつものことなので、「いい芝居になるといいなと思う」と日記には書いておこう。それにしても増田さんによる稽古場日記は面白すぎるんで、読んだほうがいいよ。そんなところ。