風琴工房

『ろば日記1999年』
Back
Home
1月2月3月



3月の日記

3月29日(月)
ついに4月17日の土曜日は完売してしまった。たった40人の限定公演とはいえ、売切れというのはやはり嬉しい。 しかもまだ3月である。辛い稽古にも力が入るというものだ。ところで今日はイガラシさんのイベントであった。なんのイベント かと言うと、これがなんとイガラシさんは、美容師でありながら、「DJ」というもうひとつの顔を持っていて、今日は彼の主催するクラブ イベントが行われたというワケなのだ。詩森とクラブ?と思う方も多いと思うが、これでも渋谷のCAVEとかが隆盛していたころは、バンド仲間 (そう、詩森はバンドスタッフをやっていたという意外な過去を持つ)としょっちゅう踊りに行ったりしていた元クラバーなんである。 そして私がイガラシさんと仲良くなったのもひとえに音楽に詳しかったからなので、これはもう自動的に出動となる。無論、桐野と一緒である。 しかし、結論から言うと、例えDJであってもイガラシさんは所詮イガラシさんであった。準備が間に合わず、開場が1時間余り押し、更に開場 してからレコードを取りにもたもたと家まで戻り、ライブの音だしをこれでもかという程間違い、それでも皿を回す姿は選曲、ミックスとも 文句なくカッコ良くて、詩森も久々に踊って楽しい夜を過ごした。そう言えば、今日の昼、髪を切りに行った桐野はイガラシさんから 「今夜は思い切りはじけてください」と言われたそうである。「はじけるっていったいいつの時代の言葉?」と突っ込みたいのを押えるのが 大変だった、とこぼしていた。どこまでもやはりイガラシさんはイガラシさんなのであった。


3月27日(土)
昨日の日記を読んだ大阪在住のK原さんからメールを頂いた。ジェーズ・エルロイの「ホワイト・ジャズ」は 四部作であるからして、その1である「ブラック・ダリア」から読み進めていくべきである、との有り難い助言であった。 もちろんそうするつもりだが、そうなるとしばらく読みはじめることができない。というのは、昨日から今日にかけてで 詩森はあっと驚く大散財をしてしまったのである。たった2000円余りの本代にも事欠くほどの買い物とは、それは実に なんというか、「素敵なアンティークの鳥籠」なのであった。鳥籠というのは意外に高額なもので、まあ、ある程度の出費 は覚悟していたが、それにしてもこのイギリス製だというアンティーク品は高かった。それだけに風格、形、パーフェクト であった。ちなみにここまでの歴代の高額小道具は、「ユダの食卓」の金魚鉢5千円(普通は2500円くらいで売っているが これもアンティーク屋でひっかかって買ったので高かった)、「最後の素足」の火打ち石7千円、「遠い球体」のつい立て 1万円、そして「最後の素足」の境の生首なんと4万円と続くが、それをはるかに越える今回の鳥籠である。 さて、この鳥籠ハウ・マッチ?


3月26日(金)
立花隆の「僕はこんな本を読んできた」という本を読んで、いきなり読書意欲の高まる詩森である。もともと度を越す 読書好きではあるが、ここ1、2年、軽いもの、読みやすいものを中心に読んできた気がする。「このままではいけない」と 今更ながら決意したわけだ。とはいえ、いきなり政治経済に手を伸ばすのも苦痛そうなので、立花隆は殆ど読まないと言っていた 現代小説を中心に本屋で買いまくった。知合いに進められたジェームズ・エルロイの「ホワイト・ジャズ」と高村薫の「李歐」 辺見庸の「反逆する風景」(これはノンフィクション)。文庫ではあるが、全部で2500円位だったので、その厚さが伺いしれる というものだ。厚いからと言って良い本というワケもある筈ないし、比較的読みやすそうなものを選んでしまった気がしないでもないが、 その厚みと重さにすっかり満足してしまい、読みもしないうちから筋違いの達成感を感じる詩森である。そして肝心の立花隆の本の著書は 一冊もよんだことがないので、興味のある進化論関係の「サル学」でも読んでみるかと思っている。ちなみに「僕はこんな本を・・・」は 読書ガイドとしては出色の面白さだと思う。読んでみたいと思う本がたくさんあった。
そして、今日はその後、鳥籠を探して西荻、吉祥寺を探訪した。そしたら、西荻に、だあっと鳥籠が下げられたヘンな店を発見して 度肝を抜かれた。店内に入り、呆然と上を見上げていると、鳥籠オタクだという女店主がが熱く鳥籠について語り出した。 その上、聞いて更に呆然その店の大半の鳥籠は非売品なのである。世の中、いろんな人がいて、いろんな店がある。ぐるぐるしながら 店を後にする詩森。明日、夏芽を連れてもう一回トライしてみようと思っている。



3月23日(火)
今日は前半の通し稽古。とにかくここまでの返し稽古は、チマチマチマチマ細かいところまで演出が入るハードなもの であった。ところが「細かいことを言われるのが好き」という桐野でさえ時にぐったりしているのに、ほんとは細かいことなんて 言われるのは大嫌いな筈の境が意外と元気なのは不思議である。難航が予想された「知的なイギリス紳士」堀田役を淡々と作っている。 それでも、「椅子を探し部屋を見回す。その椅子に坐っていいかと指し示し、鈴枝が肯くと立ち上がり移動する」という演技で30分 を超える稽古を余儀なくされるあたりが、やはり境ではある。とはいえ、この細かい稽古でいちばん参っているのが実は他ならぬ詩森 であった。アバウトを絵に書いたような詩森にとって、重箱のスミまでつつきまわすように指示を出していくのは精神的に恐ろしく 負担がかかる。それでもこんな作品だから仕方ないと最近までスピリッツで連載されていた「小津安二郎の謎」というマンガにおける 小津監督の完璧主義者ぶりを思い出しながら「どーでもいい」「なんでもいい」となりそうな自分を奮い立たせる詩森である。(ちなみ にマンガとしては別に面白い内容ではない) そういうわけなので、今日の前半通しももう全員がぐったりという有り様となって終了した。面白いんだけど、その質がいつもと違う。 どう違うかはその目でしかと確かめて下さい。あっまた宣伝になってしまった。「鳩とカナリア」どの日ももう半分以下しか席が 残っていないです。詩森の友達なんてまだだーれも予約してくれていないのに、詩森だけじゃなく、桐野も境もまだひとりも予約を 入れていないのに、劇団のDMのお客さまと何事も早め早めの夏芽の客でどんどん埋まって行く予約。それはそれで嬉しいですが、 見る予定のある方は早めに予約して下さいね。特に詩森の友達ね。頼みますよ。ホント。


3月20日(土)
玄関のベルが鳴ったので、なにごとと思い出てみると、「速達です」とのこと。差出人をみるとそれは 「最後の素足」の音楽をやってくれた寺田英一くんからであった。そう言えば今回も音楽をやって欲しくて脚本を送っておいたんだよなあ と思い、それにしてもなぜ速達・・・と訝しく思いながら開封する。結果から言うと「たいへん面白かったので謹んでお受けします」という 嬉しい内容であった。ところで詩森は実はとっても口が悪いのだけれど人を面と向かって誉めるのは苦手でそういう時は手紙を出す。 寺田くんもきっとそうなんだろうなあと思いつつ、それでも速達というのは結構笑える。でもまあ、というワケで、4月公演には このカッコイイけど変わっている音楽家寺田英一くんによる生演奏の音楽が加わることになりました。これってかなりのみどころですよねえ。 その他にも小さな公演だからこそ出来る企画をいろいろ用意しています。 どうぞ楽しみに待っていてくださいね。


3月19日(金)
今日美容院に行ってきた。イガラシさんがお店辞める前に行くのは、これが最後だ。
気合を入れて服を選びメイクもちゃんとして、お店に向かう。やりすぎたのか、会った途端、「今日はどこかに行ってきたんですか?」 と尋ねるイガラシさん。
たまにスカートをはいたので余程不自然なムードを醸していたのに違いない。最初は髪を染めるだけ、の予定だったが、 詩森が「イガラシさんがいなくなったらきっと美容室なんて行かなくなると思います」と食い下がったので、仕方なしに カットもしてくれた。しかしひとたび切り出すとノリノリになり、後ろ髪もどんどん短くなり、前髪なんてモデルのハナちゃん みたいなパッツンとした有り様となった。こうなると問題はやはり眉毛だ。「この前髪じゃ眉毛ちゃんとしないとダメですね」 という詩森の言葉に我が意を得たりと大きくうなづき、おもむろに眉をカットしだしたイガラシさんである。
今までどんなに言っても前髪を切ってくれなかったのは、やっぱり眉毛のせいだったんだなあ、とぼんやりと思っている間に メイクは進み、再び最新メーク・バージョンの詩森完成となった。このまま稽古に行ったもんだから、稽古場は大騒ぎである。 特に葉子役の鉄村夏芽は「詩森さん、モードですね。眉すごいですね。マツゲぱちぱちですね」とうるさいことこの上ない。 飲みに行っても延々、「最終ピエルベットアルバイト(こんどの公演会場)ってかんじですよね。そのメイクで受付に坐ってて 欲しいですよね」と言っていた。涼しげで美少年風の容姿からは想像もつかないあのオバサンぽさはなんとかしてもらいたい と常々思う詩森である。
そして、ついに送別会の日も決定した。4月1日、エイプリル・フール。ナンパと言っても差し支えない 強引さだったが、決定したことが大切なのだということで気にしないことにする。桐野もいそいそと手帳に書込み嬉しそうだ。 そういえば、家に帰ってから、菅原さん(詩森夫)にメイクした顔を写真にまで撮ってもらった。そのうちこのページで公開 するので恐いもの見たさで楽しみにしていてください。


3月18日(木)
菅原さん(詩森夫)の会社が10時出社になった。「なった?」と思う方のために付け加えると今まで彼はなんと 12時半出社だったのである。突然2時間の早起きを強いられた菅原さん(詩森夫)は辛そうだが、この会社の規約改正は 詩森にも由々しき事態を引き起こした。思えば一応人妻でありながら詩森が「なんちゃって主婦」でいられたのも全てはこの 12時半出社のお陰であった。なぜなら、12時半出社ということは帰ってくるのは定時でも夜の10時。ゲームプログラマ という仕事の性質上、残業は必須であるから、午前様もザラなわけである。であればこそ、仕事を持っていた頃は生活の擦れ違い による負担の大きさを理由に一切の家事を放棄し、失業で専業主婦状態の今も、趣味の料理を週末にする程度で、稽古だ夜遊びだ と呑気に暮していたわけである。この詩森の生活を知って、「そんな結婚ならぼくはしたくない」と叫んだ男友達もいた程である。 しかし、同じ主婦演劇仲間である吉岡や春野の話を聞くと、みんな詩森よりずっと立派に主婦業をしているらしい。よく、結婚生活 には向かない人だったと離婚会見など言われる男がいるが、もしかしたら詩森はそれなのかもしれない。おとなしげな見た目故か、 これ迄の人生いろんな人から「いい奥さんになりそうだね」と言われ続け、自分でもなんとなくそんな気になっていたが、 それはとんでもない勘違いであった。しかし、仕事をしている時ならまだしも失業中の今、いかに詩森であっても、これ以上 大胆に家事放棄もしていられない。「とりあえず、稽古に行く日と夜遊びする日はお弁当を作ってから出掛けよう」とあまり 前向きとも思えない決意をし、まずは形から、と近所の雑貨屋で弁当箱を購入、それを前にしてため息しきりの詩森であった。


3月17日(水)
今日は公演に使う細々したものを買いに浅草橋の「シモジマ」に行ってきた。シモジマとは包装用品や文具等 の問屋なのだがバラ売りもしてくれる。なにを隠そう文具フェチの詩森は、ここに行くと、半日は余裕で時間を潰せる。 1階から7階まで散々うろうろしたあげくに、ギフトラップ館という別館や、駅向うのもうひとつのシモジマにも足を伸ばす。 そして日頃シブイ財布の紐をだらしなく緩め、必要ないものまでだらだらと買ってしまうのである。ほんとはこの後、 新宿の世界堂(ものすごい大きな画材屋さん)にも行くつもりだったけれど、時間がなくなって仕方なく稽古に向かった。 世界堂だって行ったら最後、文具・シールの類から、必要もない額やら石膏像に至るまで見て歩かねば気が済まぬのだ。
そんな詩森の特技は小道具探しである。ありとあらゆる方法を使ってとにかくイメージ通りのものが見つかるまでどこまでも歩く。 決してあきらめない。最後の素足の「火打ち石」なんて置き屋さんにまで電話して探し出したのだ。問題は探しているうちに 妥協できなくなって、結局高いものを自費で買ってしまうことだ。お陰で我が家には公演が終われば必要のない「素敵な小道具」 が沢山うなっている。4月公演が終わるとここに「素晴らしいアンティークの鳥籠」が加わる予定である。


3月15日(月)
稽古開始である。ここまでの予想では、この3人で芝居をすると食い合せの悪い食べ物みたいになるんじゃないかと噂されて いた今回のユニットだが、読合せした限りでは、思ったよりしっくりいったのは嬉しい誤算であった。これも1月頃から打合せと称した 飲み会をさんざん重ねた成果かもしれない。とはいえ読合せを2回しただけなのに、桐野は既にぐったりしていた。消耗の激しい芝居とはいえ、 この程度でぐったりしているようでは、この後の激烈を極める稽古(予定)に耐えられるのか、危惧されるところだ。そして、稽古場でもその後の 飲み会でも話題の中心は境の髪型についてだった。宅悦から伸びかけのえも言われぬ髪型があと1ヶ月で「イメージはイギリス紳士」(桐野談) の堀田役に相応しいものになるのか心配だ。盛上がるまわりをよそに、くりくりの頭をなでさすりながら、境はどこか遠くを見詰め呆然自失の体 であった。一日も早く自分を取り戻し、立派なイギリス紳士となって稽古場に帰ってきてもらいたいと思う。


3月12日(金)
脚本が完成した。しみじみした話を書くつもりが、神経を突っつくようないやなかんじの話になってしまった。 約束より2日ほど遅れてしまったので、気が咎めて役者の家への宅配を決意する。運よく家にいて待ち合わせできた桐野は ともかく、こんなやな感じの話がいきなりポストに放り込まれていた鉄村夏芽にはほんとうに悪いことをしたと思う。 待ち合わせのファミレスでさっそく読んだ桐野も、「辛い話ですねえ」と溜め息をついていた。そうか、辛い話なのか、 どうりで体調が悪くなる筈だ、といまさら納得する詩森である。実際、桐野と待合わせの荻窪についた時には、半分貧血気味 で、いつになくフラフラだった。しかし、不幸を宅配してしまったからか、憑き物が落ちたように回復したのが我ながら凄い。 物を書くのはセンシティブな作業だが、演出は体力だ。制作モードのせいですっかり丸くなった爪を砥ぎ、来週からの稽古に そなえねばならない。


3月9日(火)
香辛料孤児の公演も無事終了。スタッフだけの参加だから、と気楽に考えていたら、小屋入りしてからは怒涛の日々でやはり命からがらの 有り様となってしまった。頑張った割にお客さんがいまひとつ入らなかったので、責任を感じて肩を落とす詩森である。
でも制作専任でやった今回の公演は面白かった。時間をかなりとられるものなので、あちこちでやりたいとは思わないが、 ここぞと思う劇団の公演であれば、また制作として関わってみたいと思う。さて、4月公演の稽古も来週早々から始まる。 今は脚本の最後の仕上げ。地味だけれど異色作になる予定なので、楽しみにしていて下さい。

3月1日(月)
先週はイガラシさんで暮れてしまった「ろば日記」であるが、制作リーダーとしての仕事も実は大詰めで、連日チラシを抱えてあっちを うろうろ、こっちをうろうろしていた。一日2件とか、ザラである。なんか、今回500枚とか、細かいはさみこみが多くて、回数をとにかく こなした気がする。あてにしていた境くんがあんまり働けなかったのでDM発送も大変だった。でもいつももっと劇団で出しているのに、 こんなに大変に思わないのは、それだけ境くんが働いてくれているからなのだろうとようやく思い至り、少しだけ反省する詩森である。 詩森も随分労働に対する耐性が強い方だが、あの人の我慢強さは国宝級である。なのに詩森はいつもDM作業の時、飽きてくると境くんに 当たり散らしたり、言葉の暴力を振るったりして、我ながらヒドい奴だったと思う。そうこうしているうちに2月も終わり、今日はとうとう 搬入であった。明日から本格的な小屋入りである。皆さん、どうぞ、どーぞ、いらしてくださいませ。


1月2月3月

戻る

2月の日記

2月26日(金)
イガラシさんが差し出した1枚のメモ、そこには、「ティアピィア」の文字と電話番号とが書かれてた。「はあ、あの、これ、なんですか」 と言うと、J−WAVEで宣伝していたとかで、テクノ関係の展示会をやっているとのこと。「きっと好きだと思って」と言うので、そりゃあ テクノ関係ならあたしは大好きさと思い、ありがたくメモをいただいた詩森。そして、店を出てから、外苑前で近いし、とお散歩がてら行って みることにした。現代美術系のオブジェとかあるんだろうなあ、と楽しみに歩いていくと、じゃじゃんと現れた、ハイテクビル。 しかし、なんか様子がヘンである。それもそのはず、驚くなかれ、ティアピアとは、「財団法人 機械産業記念事業財団」、やっていたのは、 ハイテク関係の「ものつくり展」だったのであった。空缶のリサイクル機械やらクレーン車の運転シュミレーション機械やら、産業ロボットやら、 船舶用プロペラやらを前にして、呆然とたたずむ私。ここで私になにをしろというんだイガラシさん。面白すぎるぞイガラシさん。
今、詩森は、イガラシさんに電話して、「きっと思ってるのと違うから行くのを止めた方がいいですよ」と言ってあげた方がいいのか 真剣に悩んでいる。


2月25日(木)
チラシの挟み込みのない日が今日しかないので、さっそく、行ってきた。そう美容室へ。今日のイガラシさんは最後かもという 思いがあるせいか、いつにも増して親切であった。なぜか、シャンプーもやってくれたし(普通はシャンプー専門の助手がやる)、なにやら あやしい薬をふりかけて頭皮マッサージとやらもやってくれたし、あげくに頼みもしないメイクまでやってくれた。ところが親切ではあるが 無口な彼はなにごとも突然始めるので、詩森はなんども驚きで飛び上がりそうになった。お願いだから無言のまま突然眉毛をカットしだしたり しないでほしいと思う。撮影の仕事でヘアメイクもやっているという彼はきっと詩森の手入れの悪い眉毛に内心忸怩たるものがあったのに違いない。 それにしても、である。そして、その後さしたる外出の予定もないというのに緑のマスカラを塗られ、目の上にキラキラした粉をつけられ、 最新流行のメイク・バージョンの詩森の完成となった。しかしほんとうのクライマックスは実はここからであったのだ。
どこかにいったと思ったらあたふたと帰ってきた彼が詩森に差し出した一枚のメモ、そこには・・・。以下次号に続く。(最近こればっかりだ)


2月23日(火)
さて、来週は香辛料孤児の本番である。宣伝ページを本番終わるまで「ろばのページ」番外編に立ちあげてあるので良かったら見てください。 いつもは「もののけ」やら「神隠し」やら「異界」など出てくるファンタスティックな作風の香辛料孤児だけれど、今回はなんと上海の話である。 おかげで役者は北京語のセリフをばんばん言うはめになっている。主演の越川光子ちゃんなんかはオール北京語。お母さんが台湾の人だという ライ店長役の中村正くん(この人はなんとこの間の境くんの「生首」の作者でもある)の指導のもと、涙なくしては語れない特訓の日々があったらしい。 昨日稽古場に顔を出したら、「こんなに大変だったのに“新春スターかくし芸大会”みたいと思われたらどうしよう」と不安なオモモチであった。 カット割りのあるテレビと違い、舞台は最初から最後までノンストップなのだ。間違っても“かくし芸大会”のことは思い出さないようにお願いしたい。 通しを観てないのでまだなんとも言えないけど、ストレートに胸を打つ素敵なお話なので、ぜひ皆様いらして下さい。


2月22日(月)
昨日、桐野から来ていたFAXには、実はある悲しい出来事が書かれていた。それは、なんと!私と桐野の最愛の人、イガラシさんが、 お店をやめて田舎に戻ってしまう、という情報であった。イガラシさんというのは、昨年12月の日記を読んでもらえばわかる通り、私と桐野が 通いつめる美容院の美容師さんなのである。どれほど私がこの人を愛していたかは、この短い紙面で語り尽くすことは不可能というものだけれど とにかく衝撃であった。ところで桐野はどちらかといえばおとなしい人だが、動揺すると大胆な行動に出る性質で、イガラシさんから店をやめるという ことを打ち明けられた時、錯乱して、「送別会をやりましょう」と口走ったらしい。思えば一方的に私と桐野が騒いでいただけで、イガラシさんは そんなこと知る由もないのだから、「送別会」もないもんだと思うが、客商売の彼が無下に断れるワケもなく、「ぜひ」と言ってくれたらしい。 「ぜひ」と言ったからには、多少不自然であっても「やるしかない」と突っ走る二人。だいたい人並はずれてシャイなこの三人が集まってさぞや 気まずいことになるのは目に見えているが、この際、なりふり構ってはいられない。取りあえず、詩森が今週中にもくだんの美容室に行き、 話を詰める手はずとなっている。詳細は「気まずい送別会」企画編を待て。(ちなみに決行編、更に番外編と続く。そして番外編はイガラシさん を追っての会津女二人湯けむり紀行、となる予定)


2月21日(日)
近所の池上梅園に梅を見にいったら、鈴なりの人そしてまた人。こんなにも梅が人気のあるものだとは認識が甘かった。 その後池上線沿線を途中下車しつつ小さな旅気分を満喫。6時ぎりぎりでプロジェクト・ナビの公演を見に駒場アゴラ にすべり込む。これはアゴラがやっている世紀末演劇展の参加作品で、昨日、今日で「殺人事件」そして「もろびとこぞりて」の2作品 を見せるというものである。どちらも脚本、演出とも「上手い。ざぶとんいちまい」という言葉がぴったりの作品だったけれど、 個人的にはゴトー待ちを模しながら演劇論・女優論に言及されていく「もろびとこぞりて」より人はいつのまにか無実の殺人を犯している という「殺人事件」のほうをより興味深く観た。お芝居として単純に見ると「もろびとこぞりて」の方がおもしろい気もするけど、テーマが ツボにはまった。全体的にわかりやすすぎるかなあ、と思ったけれど、まあ、それはあくまでも好みの問題であって、 あんなに伝えづらいテーマをあんなにわかりやすくお芝居にできるということはやっぱりスゴイんだと思う。 ところで家に帰ったら、桐野薫から乱れた文字で一枚のFAXが入っていた。そして、そこには・・・。ショックのあまりこれ以上は 書き進めることができないので(!?)以下次号に続く。


2月17日(水)
ヒマなのでここに書くようなこともない日々が続いている。じゃあ書かなきゃいいんだろうが なにせヒマなので、パソコンくらいしかやることがないんである。本でも読めばいいんだけど、詩森は基本的に 読書は移動中にする、というのが好みなので、家で読むのはあまりノらない。まあ、そうも言ってられないので、 4月公演の参考にとレイ・ブラッドベリの短編集を読み返している。 なぜ「女の子の友情物」にブラッドベリなのかは不明。

2月14日(日)
今日はOM−2というパフォーマンス集団を見に神楽坂ディプラッツへ。中心となっている女優内田久美子ちゃん は風琴工房にも2回ほど出演してもらった詩森のお気に入りの女優さんである。公演は面白かった。
その後、早稲田まで散歩して、町屋まで都電に乗ってみた。思っていたより大混雑なのはびっくりしたけど やっぱり路面電車は面白い。そういえばどこぞの劇団が都電を借り切った公演をやっていたけど、詩森もちょっと 興味がある。おばあちゃんの思い出話みたいなのがいいなあ、などと夢想する一時間あまりであった。
町屋は思っていたような下町、ではなくてけっこうな都会であったが行列に並んで買った今川焼きは美味しかった。 実は散歩が趣味の詩森、次は近所の池上梅園に梅を見に行こうと思っている。


2月9日(火)
制作をやってくれるかも、という女の人と新宿にて初会合。彼女は自分でもユニットを主宰しつつ制作の仕事を していきたいという人で、とにかくパワフルな人だった。機関銃のように話す、というが、まさにそんなかんじの人で 寡黙な男境と「蝿が止まるような」と時に評されるしゃべりの詩森はただただ圧倒された3時間あまりであった。 押しの弱いことでは人後に落ちない風琴工房としては、願ってもない「飛び道具」の登場というかんじである。 どうやら9月公演の制作をお願いできそうなので、ついに風琴工房も専任制作を置いての公演が実現しそうだ。 まずはめでたい年の初めである。


2月7日(日)
昨日、今日は恒例のボランティアに行ってきた。知的障害を持つ子供たちの宿泊体験のお手伝いである。 今回の担当は彩ちゃんという高校一年生の女の子だ。彩ちゃんは私にとって特別な女の子である。初めて会った時は小学生で ヘルメットをかぶっていた。自傷行為といって、辛いことやイヤなことがあると頭をカベとかにがんがんぶつけてしまうからだ。 不安が強くて、ひとときも体から離れていることができない。ずっと腰のあたりにつかまっている。お母さんと離れて泣いている 彼女と2日間無事旅行することができるだろうか、と私までたまらなく不安だった。
でもその2日間は結果、私にとって素晴らしい体験となった。コミュニケーションというのがなんなのか、 私は彩ちゃんから教えてもらった。言葉は殆どない。でも私たちはたくさんの話をその時にした。雪の夜、長い散歩をしながら。 言葉をたくさん使っても、人と人とはなかなか上手く分かり合えないというのに、あんなに幸福だった時間は他にない。 今はもう彩ちゃんはヘルメットはかぶっていないけど、私にとっては大切な女友達だ。だから、今回もほんとうに楽しかった。 彩ちゃんにとっても楽しいものだったらいいと、心から願っている。


1月の日記

1月31日(日)
今日は境くんが出ているTHEATER 16-MIXを見にいってきた。自分ところ以外に出ている彼を観たのは 物凄く久し振りで緊張したのか開演時間を1時間も間違えてしまった。
とはいえ、やはり見ておかねば、と受付嬢の制止を振り切りクライマックスの場内に乱入する。
なんでもこの劇団は「アニメと演劇の融合」を目指しているそうだ。実は詩森、宮崎駿ですら見ているとそわそわ してしまうというアニメ嫌いである。そんな詩森に「押井守を目指す」と豪語するこの劇団は酷というものである。 「遅れて良かった・・・」と演劇人にあるまじき安堵の息をもらす詩森をよそにクライマックスはこれでもかというほど 盛り上がっていた。役者たちはあくまでも熱く、若く、声がでかかった。
そんな中、医者を演じる境くんはというと、他の子と年はたいして変わらないというのに、あまりに立派なじいさんぶりで びっくりした。例えるなら七曲署の「長さん」である。「・・・しぶすぎる。境」思わず呟く詩森。
ちなみに芝居の出来はと言うと、ちゃんと押井守風であったと菅原さん(詩森夫)は言っていたので、きっとそれなり なんだと思う。繰り返すが詩森はジャパニメーションと言われる和製アニメがほんっとに苦手で、押井守が何者かもさっぱり 分かってないので、感想は特になし。


1月27日(水)
愛車ろば号にチラシをくくりつけ、池上通りを疾走する姿も板についてきた「制作」詩森である。 しかし劇作家のはしくれとして、この姿は風琴工房のお客様には見てほしくないものだとつくづく思う。
ところで今日は4月公演の打合せであった。メンバーは桐野薫と鉄村夏芽。境が客演で忙しい(今週末ウエスト エンドスタジオでTHEATRE-16MIXに出演中)のをいいことに、女の子だけで楽しくやろうと思っていたら、 桐野が余計な気をきかせて境が4月何をやりたいかを聞いてきた。それによると、「しみじみした女の子の 友情物」とのことである。実は詩森もせっかく女の子中心なので「友情物」がいいなあ、と思っていたものの なぜ境が・・・・とイヤな気分になった。境と「女の子の友情物」はどう考えても合わない。なんたって今の彼ときたら 宅悦でスキンヘッドにしたのが伸び途中でまるで終身刑の囚人のような有り様だというのに。
気がそがれた詩森は、その後、打合せそっちのけで、トムヤンクンやらタンタン麺やらの無国籍料理を貪り食い 打合せはただの飲み会と化してしまった。
というわけで4月は、「しみじみした女の子の友情物」となりました。でもきっと面白くなると思うの(!?) ぜひいらしてくださいね。それから、境くんの客演もチケノルがあるらしいので皆さん行ってあげて下さい。 できたら境くんのチケットで。きっと泣いて喜ぶことでしょう。


1月24日(日)
「極東演劇研究所」という劇団の公演を見にいった。
日曜日だし、雨だし、ぜひにも見に行くという義理でもないし、と家を出る直前まで、迷っていたけど 今回の脚本家である乾くんという人の書く話がとても好きなので、「暖かくさえあればいい」という投げやりな 服装でトボトボ新宿タイニイアリスまで出掛けたわけだ。
ところが、えらい良かった。これが。
まず、いつものことだけど、脚本の完成度が高い。硬質だけどロマンチックでそのへんも詩森の好みだ。 役者さんもみんな存在感があって、脚本にこたえている。でもなんと言っても笠松真知子さんという女優が 凄い。詩森は彼女がひとことことばを発した瞬間から、文字どおり釘付けであった。
長い長い長ゼリフがあるんだけど、もっと聞きたいなんて思ったほど、素敵だった。
ロマンチックだけどセンチにならないがりっとした演出も冴えていた。
こういうのを観ると、芝居もいいものだと心から思う。
なんでこんなに無名で客席も空いているのだろうと、残念だった。
ところで、この素晴らしい芝居の脚本家乾緑郎くんは、3月の「香辛料孤児」に役者として出演の予定である。 なんでも5年振りの役者業だそうなので、皆さん見に来てあげて下さい。


1月23日(土)
今週は風邪でつぶれてしまった。昨日までで終わる映画2本を見逃したショックは大きい。
ところでFAXを買った。詩森はもともと買い物好きだけれど、考えるところあってここ数年、なるべく消費活動は控えている。 その理由はヘンクツなので明らかにしないが、そのせいで我が家では久し振りの家電製品の到来である。
実は友人の会社からワープロ打ちの内職を継続的にもらえることになったのだ。その仕事用に必要だし、今までのように 会社のFAXで劇団の用事を済ませるワケにもいかなくなったので、思い切ったわけだ。
(とはいえ思い切ったのは菅原さん(詩森夫)であって詩森ではないのだが・・・)
まあ、でも買い物がキライで控えているわけでもないので、新品の電化製品がじゃあんと置かれた様はかなり嬉しい。 しかも普通紙FAX(感熱紙よりすごく高いかと思っていたら随分安いものも出ているんだね)。デザインも悪くない。 それにしても、もともとモノトーンのインテリアにパソコンくらいしか目立つものがない我が家にFAXがある光景は 「アキバ族」と言われる男の子の部屋みたいである。ファンシーなモノがキライで、ぬいぐるみひとつ置いていなので なおさらだ。こういうのも好きだけど、なんか潤いもほしいよなーと思う詩森であった。


1月19日(火)
風邪をひいて熱を出した。
熱を出したことじたいが2、3年振りなので、珍しい出来事ではある。
昨日香辛料孤児の稽古場でずっと作業をしていたのだが、その稽古場が暖房が壊れていて、冷えすぎたことが原因らしい。 というわけで今日は一日中寝ていたが、タイクツなので近所の古マンガ本屋で、「動物のお医者さん」を買ってきてもらい 久々に読み返してみた。実は詩森、このマンガが大好きで、前は全巻持っていたのだが、家にあるとあまりに繰り返して 読んでしまい、時間の無駄使いのような気がして売ってしまったのだ。あんなに繰り返し読んだのに、今回読み返すと また、同じところで笑ってしまう。全く目出度い話だ。きっとまた、繰り返し繰り返し読むだろうなあとちょっと憂鬱な 気分の詩森であった。


1月16日(土)
今日も映画を見てきた。驚くなかれ「ドクタードリトル」。
エディマーフィ主演の動物が出てくるアレだ。どうしても映画が見たい気分だったのと、そのあとの用事の関係でそれは 横浜でなければならなかったこと、横浜に辿りついた時間、以上の関係で思いもかけぬ映画を見るハメになった。 まあ、でも、期待してなかった分、存外に楽しい時間を過ごすことは出来た。そのへん、ハリウッドは手堅い。 そして、エディマーフィは上手い。CGも実によく出来てる。でもビデオで充分です。はい。
ほんとはスパイク・リーの「ラスト・ゲーム」が見たかったんだよなあ。大好きなデンゼル・ワシントンも出てるし。 次はそれか、「ベルベットゴールドマイン」を見る(予定)。


1月11日(月)
毎朝、人の電話で目が覚める。とはいえ、掛けてくる人が非常識な時間に電話をしてくるワケではもちろんない。 失業者詩森が、完全夜型にシフトチェンジしているためである。物心ついた頃から夜型の詩森にとってこの生活は はっきり言って天国だ。なるべく倹約し、この生活を出来る限り長く続けていきたい。それが新年にあたっての 詩森のささやかな願いである。さて、4月公演だが、公演場所がなんといっても面白い。「最終ピエルベットアルバイト」 これは馬込にある一軒家で、その一室を貸スペースとして開放しているのである。昭和20年代に建てられたという その家は、洋館風の作りになっており、とても妖しい。ここで桐野薫とユニットで趣味に走りまくった公演をやろうと 企んでいるワケだ。完全予約制。50人限定の秘演会である。小さいけれどいいお芝居、が桐野と共通の願いだが、 あまりに面白い公演場所なため、初期の目的を忘れてはしゃぎすぎることのないよう自戒したい。
そして「香辛料孤児」、この間の「最後の素足」に出てくれた越川光子ちゃんの所属している劇団だ。 この劇団、詩森がひそかに気に入っている劇団である。座付作家の大嶋なをこは、力のある若手作家であり、 目茶苦茶パワフルな座長でもある。縁あって、制作リーダーとして仕事をすることになった。実は詩森、制作が とても好きで、機会とヒマがあったら専任で制作をやりたい、というのが前々からの希望であった。 だてに荷物を運ぶ家畜の名をペンネームにしているワケではないのだ。三国一の働き者座長と自負する詩森の 本領発揮の時が来た、と張り切っている。公演は3月4日(木)〜7日(日)大塚の萬スタジオである。 タイトルは「懐念的上海(ファイネンデシャンハイ)〜わたしのすべて〜」、こちらもどうぞよろしく。


1月7日(木)
タイトル「いかにしてうちの電話は止まったか。そして電話料金を払うことへの遠すぎる道のりについて」 いきなり朝起きたら電話が止まっていた。そんなハズは・・・と思ったが、何ヶ月も前に払い忘れた料金があったらしく、 業を煮やしたNTTによる制裁措置であることが判明した。貧乏人詩森の電話であればともかく、菅原さん(詩森夫)は それなりにちゃんとした社会人であるから、家の電話が止まるなどという事態を放置するワケにはいかない。 そこで詩森は自転車に飛び乗り、「NTT池上」へと急いだのであった。
ところがである。「NTT池上」は潰れていたのである。入り口は閉鎖され、「御用の方はNTT蒲田におこし下さい」 という張り紙が風にたなびいていた。しばし呆然と佇む詩森。気を取り直し、「NTT蒲田」へ向かうことを決意した。 が、ちょっと待て。詩森には電話料金を払うことの他にもうひとつ大切な使命があった。すなわち4月公演の公演場所の 下見と仮契約である。そしてその公演場所「最終ピエルベットアルバイト」は「NTT蒲田」とは逆方向なのであった。 地図によると、「NTT馬込」というのがあるらしい。「最終ピエルベットアルバイト」は南馬込。よしゃ、好都合だっ!と 再び車上の人となった詩森であった。
公演場所は素晴らしかった。即決で契約を済ませ、悦に入る暇もなく、詩森は更に自転車を漕いだ。 その詩森を待ち受けたのは聞くも恐ろしい「南馬込5丁目地獄」であった。
とにかくどこまで自転車を漕いでも南馬込5丁目なんである。言い訳するようだが、詩森は方向感覚だけは優れている方だ。 なのに、どこまでもどこまでも、ぐるぐる、ぐるぐる南馬込5丁目は続いていた。しかも坂ばっかりなのだ。 意を決しておばさんに道を聞く。しかし、なんてこったい、ジーザス。 私が聞いたのは環7なのに、彼女の教えてくれたのは第二京浜であった。それはなぜか「NTT池上」から程近い。 まさに「ふりだしに戻る」であった。
読んでていやになったと思うけど、書いてても嫌になったのではしょるが、詩森の苦難は実はまだまだ続く。 なんたってこの後、「NTT馬込」・・・閉鎖、「NTT南東京」・・・料金窓口はありません、という信じられない悲劇に 見舞われたのだ。ようやく「NTT大森」に辿りついた時には既に日も傾きかけていた。家をでてから苦闘3時間。 長い戦いは終わった。
今日は制作リーダーをやらせてもらう香辛料孤児の顔合わせだったのだが、電話料金を払う、そんなことが一大事業に なってしまう詩森に果たして「制作リーダー」なんてものが務まるのかと不安が募る。この気の毒な劇団、香辛料孤児 のことと、ついに全貌を現す風琴工房4月公演については、以下、次号に続く。


1月6日(水)
今日は風琴工房が世界に誇る受付嬢のうちのひとりである晴美ちゃんと「ビックリボウスキ」に行ってきた。 「ファーゴ」が大ヒットしたコーエン兄弟の新作である。
これが、「ファーゴ」に比べるとねえ、という事前の風評にも関わらず、詩森的にはえらい面白かった。 そりゃあ「ファーゴ」はなかなかないような傑作なので、いかにコーエン兄弟とは言えど毎回あんなのを撮れというのは 気の毒というものだ。でも「ビックリボウスキ」だって充分すぎるほど面白かった。まず、「ボウリング」っていうのがいい。 「ビックリボウスキ」はさえない場末のボウリング場に集うさえない男たちがマヌケな事件に巻き込まれる話、なのだ。 他のスポーツとボウリングが決定的に違うのは、凝れば凝るほどなぜかヘンタイチックになってしまうところだと詩森は常々 思っていた。「あの人さあ、マイボール、持ってるんだよねえ」というのが何故かそれだけでギャグになってしまう不思議。 野球のグローブを持っていたって笑う人はいないが、社内ボウリング大会でマイシューズを持参したら絶対後で話題になる。 この映画はそういうボウリングのヘンタイ性を描いて余すところがナイ。 もうこれだけでマーベラスではありませんか。そう思えない人は見に行ってもきっとキツネにつままれたような気分になって しまうだけ、かもしれない。万人には薦められない。けど詩森的にはほんっとに、面白かった。最後ヘンな爺さんの語りで 「人生は・・・」みたいな説明が入ってしまうとこだけはいただけないと思ったけど。それは言わぬが花ですぜ、コーエンさん、 と突っ込みを入れたくなった。
それにしても映画は1本見ると次々見たくなるのが困る。次は何を見に行こうかなあ。


1月4日(月)
明けましておめでとうございます。詩森、ようやく帰ってまいりました。 さて今回帰省した菅原さん(詩森夫)の実家の釜石と詩森実家の盛岡とは同じ岩手とはいいつつも汽車で2時間半かかる。 岩手は広い。それを実感した今回の帰省であった。ほとんどを移動で費やしたと言っても過言ではない。なにせ説明するのが めんどくさいので「ダンナの実家は釜石」で通しているが、実はそこから更に30分ほど汽車に乗った「岩手船越」 というところに実家はあるのだ。ここがまたほんとーになんにもないところで、なのに駅から5分ほどの場所にぽつんと 遊園地がある。初めて行った時、なんてシュールな風景だ、と思ったら昨年末に潰れたらしい。そのせいか町全体に いちだんとうら寂しいムードが漂っていた。「ゼルダ」というバンドの「埋め立て」という唄のなかの風景みたいだった。 廃虚好きの方には冬の「岩手船越」だんぜんオススメである。あたしもカメラ持っていけばヨカッタ。
それにしても海の見える電車に乗って帰る故郷というのは、内陸育ちの私には新鮮で、嬉しかったことである。 ミヤザワケンジのお膝元らしく釜石線の駅にはエスペラント語の愛称がついててちょっとヘンだったけど、 旅人にはあれも嬉しいサービスなんだろうかねえ、なんて思いつつ、そうそう、釜石線の中で逢った一人旅の青年は たった5日間で東北を一周し、更に山陰から山陽道を廻って大阪まで帰るらしい。その間乗るのは全部各駅停車ですと。 いやあ、いるんですねえ。鉄道マニア。まあそんなこんなで正月も終わりなわけだ。 今年もどうぞよろしくおねがいします。



Back
Home