ろばくん ROBA DIARY

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7月31日 Tue

 朝、起きたら熱があった。詩森は体温の調節があまりできない変温動物なので、涼しい日が続いて急に暑くなるとどうしたことか熱が出るのだ。なのでフラフラ。でも今日はどうしても会社に行かなければならないので会社に行く。群馬の本社にいる社長の息子がマイレージで航空券を買いたいのだそうで、そのマイレージの期限が今日までなのだ。
 とって欲しい飛行機の時間と目的地を聞いて、ANAのカウンターへ。さんざん順番待ちしたあげく、社長の息子から言われた飛行機の便を言うと、ニベもなく「ありません」と言われる。それはいったいどういうことなの。電話してみたがお昼に出掛けているというので、仕方なく会社に戻る。午後になって、本社に電話すると、社長の息子が出て「あ、ゴメン、2000年の時刻表見てたよ」などと宣う。なんじゃそりゃ。やめてくれよ。そんな出来の悪い4コママンガみたいなオチはさ。この社長の息子、後を次いだらお家没落は必至、と言われるバカ息子なのだが、その風評、あながち嘘でもないのかもしれない。
 ようやく航空券をとって、劇団の予定をキャンセルして、命からがら家に帰る。お水をたくさん飲んで寝ていたらだいぶ良くなってきたので、また、掃除。寝たり起きたりしながらも掃除。
 当然引越の日々は続く。

7月30日 Mon

 会社から飛んで帰って居間の掃除。あと、少しで完了、という時になって、電話がなるので出てみたら寺田くんであった。用事があって留守電に入れておいたのでコールバックをくれたのだが、なぜあの人は深夜2時近くなっても平然と電話をかけてくるのだろうか。タービンがオカンムリになるワケである。
 まあでも用事があったのはこちらなので、「9月公演のことでお願いしたいことがあるんだけど」と切り出すと、「受付?」とノリノリだ。なんでも寺田くんが受付をやるときはアゴラのロビーに雪を降らせなければいけないのだそうだ。しかも、ギターソロ付き。いらないよ。そんなはた迷惑な受付。あげくの果てに、そんな深夜の電話だと言うのに「書生になりたい」というワケのわかんない寺田くんの夢について延々と聞かされるハメに。なんなんだよいったい、その「書生」っていうのはさ。電話を切ったらものすごい時間になっていたような気がするが、怖いので時計は見ないで就寝。
 引越の日々は続く。

7月29日 Sun

 引越当日。朝8時、引越屋さんがやってくる。
 実家にいたころを除くと、引越やさんに引越を頼むというのが、初めての出来事の詩森。さすが社会人の夫を持つと引越もグレードアップし、演劇人としては堕落するのである。
 それにしても引越やさんは優秀であった。しかも人間的にも素晴らしい。世の引越やさんというのは皆このように素晴らしいのであろうか。それとも「かるがも引越センター」が 優秀なのであろうか。なにごとによらず「プロ」という響きに弱い詩森。うっとりと引越の成り行きを見守る。相見積もりを取ったとき、D社の営業マンが「あそこはダメです」とさんざん悪口を言っていたらしいが、「かるがも引越センターはそれはそれは素晴らしかった」、と声を大にして言いたい詩森だ。
 午後からはシンゴと松岡さんが旧詩森亭の掃除に来てくれる。意外なことにシンゴ大活躍。指示をとばしながらテキパキと片付け。ものすごく優秀。さすが宅建主任(関係ない)。スミからスミまでピカピカとなり、午後4時30分、終了。
 しかし、詩森の一日はまだ終わらない。シンゴと松岡を含めた総勢9人でお台場に。「ク・ナウカ」「天守物語」を見に行ったのだ。いや、あのね、面白かったよ。しかもものすごく。やっぱり鏡花は華やかでいいよね。「天守物語」は最後、いきなり作者が出てきて、ハッピーエンドになっちゃう話で、ワケわかんないし、鏡花の作品として特に好き、というのでもないのだが、なんだかんだとセリフもそらんじられるくらい見ている詩森。なので「千歳、百歳ただいちど」の名セリフのときは、美加里さんは見たいわ、阿部さんも見たいわ、キョロキョロしちゃってタイヘンなことに。
 面白かったわ。ホント。
 そして、飲みに行く。今日は引越だったけど、引越祝いと称して飲みに行く。お台場からだとりんかい線で一駅だけど、わざわざ新橋回りで帰ってまで飲みに行く。どうなる生活習慣。そんな引越当日。

7月28日 Sat

 朝、劇団の荷物を倉庫に運ぶ。押入一畳分の貸し倉庫を借りたのだ。なんとはなしに嬉しい。
 夕方、荷造りに飽きてしまって、家具を見に行く。「なんでもいいよ。どうでもいいよ」というタイプに見えるのに、実は棚ひとつ、カーテンひとつ買うのにも自己主張せねば気のすまない男、菅原さん(詩森夫)は、どーいう風の吹き回しか、今回の家のインテリアは私に任せてくれることに決めたのだそうだ。私が独身の頃住んでいた八千代荘(いい名前ざんしょ。いいアパートだったのよ。ここが)が彼的には気持ちのいい空間だったから、というのと、自分の好みのインテリアになれば少しは掃除をするだろう、という夫としての政治的配慮によるものである。
 ちなみに菅原さん(詩森夫)は世の男性としては出色なほど性役割的なものには固執しない人物なので、その菅原さん(詩森夫)が家事を要求する、というのは、つまりどれほど詩森が同居人としての最低限の役割を果たしていないかに因るものであり猛省を促したい(自分に)。
 まあ、そんなこんなで家具を見に行く。赤いソファを買ったのだが、これを買ったら少しは家事をやらなきゃいけないんだなあ、と憂鬱な気持ちになる。そして、ソファを買うたび、ゴミ箱を買うたび、「生活習慣の改善をするんだよ」と言い続ける菅原さん(詩森夫)。ええ、まあね、やらなきゃね。でも9月と1月に芝居あるし、稽古始まっちゃうしね。いや、やりますよ。もちろん。やる気はあるんですけどね。
 そして、もちろん荷造りは徹夜。正確に言うと、菅原さん(詩森夫)だけが徹夜。そんな引越前夜。そんな生活習慣。

7月27日 Fri

 荷造り。とりあえず他にすることもなく荷造り。できる筈もなく荷造り。ああ、引越だなあ。でも引越は好き。公演が終わったこのタイミング。いいではないですか。なにもかもがリセットされるかんじで。
 そして、今日もまた一通の手紙を書く。わたしにとって大切な手紙を。うまく伝わるだろうか。うまく伝えられるだろうか。

7月26日 Thu

 1月の脚本の第一稿、上がった。何度か読み返して、今の段階ではもう直せないと思ったので、プリント・アウトして、郵便局に行き、みんなに送った。立ち上げからだと3年も4年も関わっていた脚本なので、「終」と書いたときには、ちょっとふしぎな気持ちだった。それから、手紙の返事を書いた。すべて予定より一日早い。明日はオマケの一日。引越しに捧げたいというか、捧げるべきだろう、と、思う。

7月25日 Wed

 もう一回、渋谷のパルコに昨日のソファを見に行く。うーん、どうかな。やっぱり安物は安物ってかんじがするよね。菅原さん(詩森夫)の仕事が伸びて来られなかったので、家に帰って片付けの続き。ああ、果てしがない。荷物に埋もれるようにして就寝。

7月24日 Tue

 リノリウムを拭くお仕事と反省会のために劇団ミーティング。
その前に詩森は渋谷にソファを見に行く。ソファが好きで、イデーのカタログを座右の書にしている詩森だが、ソファを買うのは実は生まれてはじめての出来事。しかし大好きなイデーのソファは菅原さん(詩森夫)の好みにイマイチ合わないので諦めざる得ない。背もたれが固くてピシッとしているのが彼はダメなのだ。でも詩森は形がグスグスのソファは嫌い。ふたりの好みの折り合いをつけるのはこれでなかなか難しい。アンティーク風のレザーで可愛いものを見つけ、ついでにアジア風の食器棚もチェックして、これらのものを明日にでも菅原さん(詩森夫)に見てもらいましょうと渋谷の町を後にする。
 劇団員と品川駅で待ち合わせし、新居へ。100メートル近くあるリノリウムを拭いてから反省会。何といっても話の中心は赤字の話。ええ、赤字ですとも。清々しく、しかもけっこう巨額。なので風琴工房、8月は劇団員総出で試食販売のバイトをすることになりました。ほほほほ。可愛らしいでございましょ。ダサダサで。
 その後、やっぱりお芝居の話。いい話し合いだったな。私たち劇団じゃん、って思ったよ。たった4人だけど。この公演の良かったところ、悪かったところ、公演中は特には話さなかったけど、みんな同じように思っていたんだなあって。特にネガティブな部分を共有できたのは、とても、良かった。ちょっと元気が出たよ。これからは劇団。何といっても劇団ですよ。ホント。

7月23日 Mon

 隠れ家みたいなお店で暑さに喘ぐ街を見下ろしながら大切な人と話す。新宿3丁目のドドールで鉄村さんと反省会。劇団の荷物を収納するためのトランク・ルームを契約する。新しい家のためのソファを探す。いつのまにか「いつものメンバー」になってしまった仲間たちから「海に行こう」と誘いのメールがくる。「東京湾花火大会」にも行きましょうねとメールを返す。家に帰ると待っていたのかもしれない手紙が届いている。芝居は終わる。私は生きていく。
 1月の台本、書いている。また芝居をやるんだ。9月も、1月も。そしてその先も。いや、まあその先はいいや。とりあえず、9月。そして1月。そして8月はなぜか2回も、海に行く。大嫌いな海へ。まあ、それも良し。それにつけてもどんどん週末が埋まっていき、「猿の惑星」にいつ行くかが問題。

7月22日 Sun

 朝から新居のクーラー工事。クーラー屋のお兄さんはとてもいい人。なんでも芝居を昔やっていたのだそう。そしていよいよ引越は来週。それにしても引越と体調不良のせいでさんざんな連休であったことだよ。

7月21日 Sat

 頭痛と腹痛。今日見に行く予定だった芝居を泣く泣く諦め静養及び合間に荷造り。具合悪いので効率悪し。鉄人並の体力を誇る詩森だが、暑さにばかりは弱いのだ。朝っぱらから30度なんて超えられちゃった日には、死にますよ。ほんと。

7月20日 Fri

 来週の引越に向けて片付け。夏バテらしく体調不良。ぐったり。

7月18日 Wed

 荷物の返しを西嶋くんと。なんだかもう抜け殻みたいだ。家に辿りつき、目ざめた時、ここがどこかも解らないほど。水槽の底で死んでる金魚みたいな気分。菅原さん(詩森夫)とデニーズでゴハンを食べつつ、芝居の話。菅原さん(詩森夫)は超理系なので、質問ひとつとっても曖昧な言い方を好まない。疲れているので、以心伝心察してくれよ、とも思うが、一生懸命言葉にしている最中に、ふと正解みたいなものが浮かぶことも、ある。最も今日はただ疲れただけだったけど。
 今やりたいことは脚本を書くこと。逞しすぎるかもしれないけど。こんなココロの底までカラカラの夏に、わたしのやりたいことはたったひとつだけ。私にとっての癒しも絶望も、脚本を書き作品を作るという行為の中にしかないのだ。
 見に来ていただいた皆様、ほんとうにありがとうございました。いろいろなことのお返事はやはり次のお芝居で。ではまた。

7月17日 Tue

 最終日。
 今日もたくさんのお客様がいらしてくれたが、昨日の反省もあり、多少は客入れもスムーズ。それでもまだまだバタついてしまう。
 何もかもがチャレンジな舞台であった。最終日となり、好評も不評もずいぶん耳に届いている。的ハズレな賛辞も批判も、的確な賛辞も批判も、作り手は甘んじて受け、誰よりも深く自分を批評しながら、次につなげていかなければならないのだと思う。
 打ち上げの席で、寺田くんが「今日、死んでもいい」と言っていた。そうだ。本番が終わると、いつも私も死にたいんだ、と思う。役者はみんな楽しそうに飲んでいる。無関係な私がいる。なのに死なないのは、どうしても次の芝居を作りたいといういぎたない欲望故なのだと思う。業みたいなもの。そこから逃げることができないのなら、せめて強くなければならない。  

7月16日 Mon

 今日は大入り。なんだかよくわからないくらいお客様がいらっしゃる。桟敷も通路もギチギチ。立ち見の方もいらっしゃる。対するこちらは手際の悪いことこの上ない。多分、不愉快な思いをされた方も多いはず。この場を借りて深くお詫び申しあげます。
 今日はウィークリーがひとりになってしまうので、松岡さんを誘って泊まってもらう。さあ、寝ようかという深夜2時過ぎ、携帯が鳴ったので出てみると、それは寺田くんであった。一応用事があったらしいが、例によって無駄話をしたいムードがありありである。明日は会社にも行くことだし、「迷惑だ」とノドまで出かかったが、ついつい付き合う。そして明け方就寝。

7月15日 Sun

 昨日の八尋さん失踪事件に引き続き、今日は朝からたいへんだった。横山裕子嬢と朝ドトールでゴハンを食べていると、そこに某男優が彼女と同伴出勤でやってくる。手を繋いで赤坂の町を闊歩していたという目撃情報多数。しかもステージドア(楽屋口)の前で手を振って別れるというさわやかさ。私もタービンもそして瞳ちゃんまでいたとゆーのに…。そして、某女優も彼氏同伴でドトールへ。終演後のロビーでは某バンドメンバーが彼女に肩を抱かれて談笑しているし、人が単身赴任で頑張ってるちゅーのに、それはいったいどーゆーことなの?
 なので、芝居を見に来てくれた三木さん、渋谷くんとゴハンした後、今日はひさしぶりに家に帰る。飲んでもいないのにグテングテン。ああ、もうほんとうに疲れたよ。でも芝居はあと2日、このゴージャスな舞台も最後のラストスパート。ぜひぜひみなさんいらして下さいませねー。

7月14日 Sat

 今日は2ステージ。体力的にかなりキツイ。昼間のお客さんはけっこうあったまりやすいお客さんだったらしく、昨日はシーンとしていた北極カフェのシーンでどんどん湧く。調子にのった関根マスター、超ブレイク。稽古場では見たこともない演技を次々披露。
 八着の提案で今日は打ち上げは焼き肉に。調子に乗ってたくさん食べたためお会計はスゴイことになっていたが、焼き肉自体はものすごく美味しかった。特にプルコギ最高。今日もまた終電を逃したよっちゃんと八尋さんと寺田くんはウィークリーに。
 人にさんざんマッサージをさせた後、寺田くんはタクシーで帰っていき、よっちゃんは例によって床に大の字になって寝てしまった深夜3時、八尋さんが散歩に行く、と言って出掛けてしまい、それきり帰ってこない。さすがの詩森も心配になり、ほとんど一睡も出来ぬまま朝を迎える。朝8時、ようやく帰ってきた八尋さんの言うところによると公園で寝てしまい、散歩の犬に起こされたそうである。まったく人騒がせな話だ。
 こんな個性豊かなパンドのお世話で詩森は連日ほんとうにたいへんである。これじゃ演出家じゃなくて、まるでマネージャーだ。そう言えば、今日はよっちゃんから着ている服についてのダメ出しまでされてしまった。よっちゃん曰く、「その劇場に毎日来ているファンみたいな服装はなんとかならないの」だそうである。洗濯やらマッサージやらさせられた上に服装にダメ出し。ほんとトホホってかんじだ。でも負けない。明日も「劇場に毎日来ちゃったファン」みたいな格好で堂々と最後のアイサツをしてやるわ。だって私は演出家、演出家なんですもの。

7月13日 Fri
  朝、劇場に来るとタービンが怒っていた。明日で大丈夫です、と何度言っても、とんでもない時間に寺田くんが予約の電話をかけてくるのだそうだ。深夜、早朝、「齋藤真吾よりタチが悪い」とターピンはムチャクチャ、オカンムリである。齋藤真吾よりタチの悪い出演者。それはいったい許されるのか?
 今日は終電を逃したベースのよっちゃんが阿部ちゃんに引き連れられ、ウィークリーに泊まりに来る。ちなみにこのウィークリーでは詩森、阿部女王、横山裕子の3人が合宿中だ。よっちゃんは床で、わたしたちはベットで就寝。

7月12日 Thu

 初日。
 ゲネをやって、余裕の本番。今日は寺田くんの髪をみんなで色を抜く。この短い間に3度目のブリーチである。詩森、シンゴ、西嶋、よってたかってキャーキャー大騒ぎだ。オカゲでガンコだった寺田くんの黒髪もキレイな茶色に。色が白いのでこのくらい茶色いほうが地毛っぽいかんじだ。そして寺田くんは座った椅子にガムがついていてそれがズボンについたと言ってものすごく怒っていた。
 その後は詩森はヘアメイクとして大わらわ。なんだか忙しい。
 本番は初日らしくいろいろとハプニングもあったが、熱気のうちに終了。それにしても最後のドラマー八尋さんの超ロング・ブレイクには驚いた。女王のセリフが聞き取れなかったことによるものだが、それにしても、あの間こそが「永遠」というかんじだ。
 たくさんの人が参加しての初日打上げ。ああ、ついに始まるんだな。

7月11日 Wed

 関口さんが時間を気にする様子もなくずーっと明かりを作っているので、スケジュールは押せ押せ。場当たり開始時間になっても出来てる明かりは1/3とか。仕方ないので最初に音作りと役者の動線確認をして、ようやく5時過ぎから場当たり。これってかなりヤバイ状況??さすがの八着もちょっと引きつり気味。
 ところが、いざ場当たりをはじめると、そりゃちょっとはQが遅れたり、単サス欲しいところとかあるけど、照明には何の問題もない、というか、むしろかなり素晴らしい。おかげで場当たりではなくほぼランスルー状態となってしまった。止めるところなし。
 いやもうねえ、明かり、カッコいいッス。次はどんな明かりが出るのかしら、とワクワクしているうちに場当たり、というかゲネプロ(仮)程度のものが終わってしまった。ここまであんなにあんなに押していたのに、大逆転。もう稽古するところもない、ということで、なんと9時には劇場を後にする。初日の前の日にこんなに早く終われるなんて!!なので、八着、怜雅、西嶋+バンドメンバー3名で、メキシコ料理を食べに行く。話題の中心は超マイペースなことが発覚した関口さんの明かりの素晴らしさ、そして、あんなにもたくさんのコロガシ(下に置く照明)を動線も気にせず置きまくったことである。しかもそこにコロガシをおくことは、八着も詩森すら知らされてはいない。稽古場で、「コロガシとかSS置きたいけど、装置的に難しいですよね」と言ったとき、「いやあ、ムリヤリ置きますよ」とさわやかに笑っていたのはこーゆーことだったのか。いやもうたしかにムリヤリだったよ。あのさわやかさにはだまされたよ。タダモノじゃないね。関口さん。さすが当代一の売れっ子照明家。でもまあオカゲで美味しいタコスを食べ、豆の煮込みを食べ、ハッピーな気分でウィークリーに帰宅。
 それにしても場当たりのとき、用意されたガナリマイクを見て、ああ、この馬鹿げた公演の首謀者は私なのね…と、なんとも言えない気分になったことだよ。

7月10日 Tue

 仕込み初日。荷下ろしだけでぐったりする物量。
 しかし、舞台監督の八着くんがものすごく頼りになるので、詩森的にはいつもの仕込みよりずっと気楽な気分。
 ああ、それにしても大がかりだわ。見ているだけで気が遠くなる。面白いこともたくさんあった気がするけど、この猛暑で記憶も途切れがち。今日から詩森は劇場の裏手にあるウィークリーマンション。徒歩2分。部屋も広くて素晴らしい。やりますわよ。

7月9日 Mon

 稽古場最終日。今日は通しはせずに、細かい返しと作業。6時過ぎからは積み込み。すごい物量。泣きそうだよ。
 劇団員は明日の仕込み人員が急に足りなくなったのと、全日OKのハズの受付さんが急にこれなくなったのとで、大わらわ。フラジャイルの小里くん、という、「いくらなんでもそれは頼む筋合いじゃないでしょう、という人にまでお願いする。なんとかカタチをつけて深夜帰宅。

7月8日 Sun

 今日でバンドさんと音響さんは稽古場打ち上げ。よって生演奏での最後の通し稽古。稽古後はヘロヘロだったが、やる気満々のよっちゃんに引き連れられ飲みに行く。で、騒ぐ。騒ぎ過ぎてヘロヘロで帰宅。帰宅すると菅原さん(詩森夫)が引越の件でいろいろ報告してくれる。そーだ。終わると引越だったんだ。あーたいへんだ。もうイヤだ。こんな生活。
 でも今回、稽古がおもしろすぎて、演出家モードにギアが入りっぱなし。制作の件等抜け多すぎ。すかさずそれを見て取ったタービンに、もうアテにしませんから、とニベもなく言われる。でもここから先は任せといて下さい、とも言ってくれる。くーっタービン、頼りにしてるぜ。
 とゆーワケで公演、ホンットおもしろいっす。どんどん面白い。惜しげもなく。初日がお席空いていてちょっと淋しいので、ぜひ!皆様いらして下さいませねー。

7月7日 Sat

 今日はタタキ。合間のメイク稽古。今回のメイクは詩森、メチャクチャ力が入っている。ヘアも全部やるし、メイクも全部指示を出しつつ、仕上げていく。みんなものすごくカッコいい。最後に千鶴ちゃんが衣裳を持って来てくれる。美しい。そして素晴らしい。特にナツメの衣裳はものすごいことになっているのだが、メイクをして登場したとき、今まで見せてもらえなかった男優陣(そう仮縫いとかは男子禁制にせざる得ないほどのキワドサなのだ)、一気にどよめく。植村さんなどポカーンと口を開け、固まっていた。そんな植村さんのスボンは詩森のお手製。いや、もうかなりステキ。どーぞお楽しみに。

7月6日 Fri

 女優陣池袋に大集合して靴探し。時はバーゲン。キャーキャー言いながら大騒ぎ。こういうときは演出家も女優もなく、ただの烏合の衆。最後は関根マスターと待ち合わせ。最初に入った店で、ちょっと履いてみた靴を「これ、いいかも」と言ったとたん、店員さんに金額を聞き、あっというまのお買いあげ。ああ、買い物の仕方までもが男らしい。「男らしい」という言葉には女としては珍しいくらい反応しない詩森であるが、関根マスターの男侠にはちょっと惚れる。さすが相方。
 その関根マスターの素晴らしいシャウトにのせ、うなぎのぼりのクライマックス。鳥肌たちますよ。ほんと、ステキなんだから。
 そう言えば今日、寺田大先生はヘンな海パンのような姿で稽古場に来たため、女優陣からも男優陣からもものすごいブーイングを浴びていた。最初詩森のジャージを貸したが、あまりにジャージが似合わないので、西嶋くんが自分のズボンを貸し、それも似合わないので、早く衣裳に着替えてくれ、とみんな非難轟々。今日は衣裳は着ない、とか、ロッカーは服装じゃないと言いつつ、その度渋々着替える寺田くん。まったく暑いからって油断しすぎ。困ったものだよ。

7月5日 Thu

 昨日「衣裳」と称して寺田くんがいろいろ持ってきてくれたのだが、それがもう「お前、あたしを笑かすためにだけ持ってきたのかよ」、という素晴らしい衣裳ばかりだったことに業を煮やし、今日はバンドの衣裳を買いに行く。よっちゃんはいつもエスニックっぽい服装が似合っていて私服でもぜんぜん問題ないが、問題はいつも穴の空いたTシャツ姿の八尋さんと、冬場はとてもオシャレなのに、夏は暑いからという理由でどーしよーもない格好ばかりしている寺田くんである。
 靴を買うために待ち合わせしたシンゴにも付き合ってもらい、寺田くんにはイギリスのロック少年をイメージしたTシャツを、八尋さんにはちょっとアメリカンだけどぎりぎりクラブ系の赤いTシャツを購入する。まったく、手間がかかるってばありゃしない。
 そしてこうなってくると問題となるのは寺田くんの髪型である。ここだけの話、天然パーマが伸びっぱなしとなり、どう見ても小泉首相の「純ちゃんカット」なのである。どーよ、純ちゃんカットのギタリスト、誰が見たいんだよ。いないよ。絶対そんなヤツはさ。お願いだから床屋に行ってくれ、と何度懇願しても「忙しいから」とニベもない。その割には「別に切るなら切ってもらってもいいよ」などと言う。それはこのアタシに髪を切れとゆーこと?男の子の髪なんて切ったことないから自信なんてまるきりないけど、まあ、今の髪型より酷いことにはなるまい、とカットを決意。ついでに髪の色も軽くしてやると、近所の店で鍬きハサミとブリーチ剤を購入する。
 有無を言わせず実行。
 ジミーペイジっぽくギターを弾くつもりの寺田くんの趣味などまるで無視して、小僧チックな髪型となる。「これじゃフリッパーズギターだよ」と寺田くん。いいの。オザケン大好き。イメージ通り。返す刀で色も抜き、完成。明日は愛ちゃんと裕子ちゃんの前髪も切ってやる、と決意。でも寺田くんときたら、いい年してセットもひとりじゃロクにできない。今回のメンバーはそんな人が多いので、あたしは初日あけたらただのヘアメイクかも。

7月4日 Wed

 ようやく稽古本格化。頭から徹底的に返していく。実寸がとれるデッカイ稽古場のため、詩森、ろくでもない演出アイデアを次々に思いつき、たいへんなことに。
 夜はバンドを入れての初通し。
 あのね、趣味の問題はあると思うんで、なんとも言えないんですけどね、面白いですよ。そりゃあもう単純に。もちろん芝居的には難もいっぱいあるんだけどさ、こーんなバカなこと、後先考えずやってるところは、他にはないと断言したいね。アタマのいい演劇じゃぜんぜんないけど、「あーこの人たちってなんてバカなの」って思ってもらえるように最後までやるよ。あたしは。そして、阿部ちゃん、関根さんを筆頭に、この人たちホンット芝居が好きなんだな、と思えるメンバーとやれるこの幸せよ。
 稽古後はもちろんモロッコ料理「小料理屋みなみ」へ。ラテン系マスター関根さんも今日は飲みに行く。モロッコワインで一同ヘロヘロ。シンゴ、詩森の膝を枕にし、「ぜんぜん酔ってませんよー」などと宣う絵に描いたような大酔っぱらいとなり、みんなでかわるがわる腕をひっつかみ連れ帰る。それにつけても同じだけ飲み、なにごともないようにケロっとしている清水怜雅のスゴサよ。

7月3日 Tue

 酷暑の中、引越。
なんかさー、旅の一座みたいだよ。
 関係ないことだが、引越後、寺田くんと近所への音漏れを聞きに裏に回った時、寺田くんがとんでもないものを発見する。「小料理屋みなみ」。いやそれだけならどこにでもよくあるなんのヘンテツもない赤ちょうちんなのだが…。その「小料理屋みなみ」の前に出ている看板にはあろうことか、「モロッコ料理」と書いてある。なんだそりゃ。いったいぜんたい。
 そういうことにはからきし弱い寺田くんと詩森。稽古終了後、当然のようにそこに飲みに行く。6席ほどのカウンター、そしてカウンターと対面のキチキチの座敷。確かによくある赤ちょうちん。しかし、カウンターの中にはモロッコ人のご主人と日本人の若妻。そしてメニューは超本格的モロッコ料理。
 一同大喜び。いや、もうね、すごいよ。ホント。しかもスッゴク安い。銀座あたりで食べたら2000円くらい取られるクスクスが700円とか、そんなカンジ。もうね、たいへんな大発見。幸せ。
 というワケで地下のスタジオに移って、ようやく稽古も開始。そして「小料理屋みなみ」に事情が許す限り毎日通うとココロに誓う、寺田くんと詩森であった。

7月2日 Mon

 昼は返し稽古。バンド入りで練習を始めたとたん、オーナーが血相を変えてやってくる。近所から苦情の電話が鳴り響いているらしい。明日の3時から地下に移って下さい、ということで、昨日あれだけ苦労したセッティングをバラして明日に備える。あーもーガッカリ、というその時、ベースのよっちゃんがいきなり、「まあなあ、ロックだもんなあ」と言い出す。「苦情が来るってことはさあ、正しくロックをやってるって証拠だよな。」。
 誰ともなくわきあがる拍手。一同大喝采。
 そう、あたしたちはある意味正しい。
 いいじゃん。苦情。見せてやるぜ。ロック魂。
 と、ゆーワケでいい年して、分別のないことこの上ない風琴工房。そして詩森ろば。
やりますわよ。

7月1日 Sun

 今日から一日稽古の稽古場入り。
 装置積み込みの場所にシンゴいきなり遅刻。電話が繋がったのが、もうほとんど運んでしまった後だったので、先にスタジオに行っていろ、と言って、スタジオまでトラックで行くとシンゴがいない。それはいったいどーゆーことなの?と思ったら、どうやらヤツは場所を間違えたらしい。馬鹿すぎる。反省しないことでは他の追随を許さないシンゴもさすがにしょげ返って、泣きそうになっていた。なので、ジュースやらアイスやらさんざん奢らせる。肩ももませる。当然だよ。当たり前だよ。そのくらいのことはさ。
 今回はバンドが入って、PA入って段差のある装置作ってと、ほんとうに大がかり。
 しかし、予想されていたことではあるが、音出しを始めたとたんうるさいと近所から苦情が……。そりゃあ、そうだよな。でも、ドラムとPAが入る件は当然最初から言ってあるワケだし、そのために借りた稽古場なので、音を出さないのはムリです、というと地下のスタジオに移ってください、という。この大がかりなセットを地下に移動?泣きそうだけど仕方ない。仕方ないけど、たいへんなのは音響さんとバンド、そして装置リーダーの植村さんと関根さんだ。
 でも地下に移るのは4日からなので、そのための応急措置として、パンチを窓に貼ったりして養生する。気のいいよっちゃんと八尋さんは率先して手伝ってくれる。仕込みは一切やらないことで有名な寺田大先生まで働く。彼があのようなまとまった労働をしているのは初めて見たが、イメージしていた以上に労働が似合わない人である。そんな寺田くん、今日は地下のスタジオから重いギターアンプを運び上げたせいで具合が悪くなったそうである。まったくどいつもこいつも。
 そして詩森にはひとつ大きな野望があった。それは寺田くんが運転する車に乗ることである。寺田くんはあれでいて車を3台も廃車にした男なのだ。なので、彼は極力運転というものをしようとはしない。でも詩森はそのデンジャーな運転をどーしても、どーしても味わってみたかったのだ。「今日しかない」と決意した詩森。経堂に忘れ物をした植村さんが寺田くんの車に乗っていく、というので、「私も乗りたい」と言ってみる。もちろん返事は「ノー」である。なんだかんだ言っても寺田くんは怖いので、いつもならここで引き下がるが、どーしても乗ってみたかった詩森、ほんのちょっとでいいから、とワケのわからないことを言ってムリヤリ乗り込む。高円寺まで送ってもらう阿部ちゃんが降りた時、「あんたも降りろ」と怒鳴られたが、「経堂まで行く」、と言い張ってそのまま居座る。まあ、寺田くんの名誉のために付け加えると、まるきりちゃんとしたセーフティドライプでしたけどね。もっと男らしくデンジャラスな運転を期待していたのにさ。ちょっとガッカリ。
 辿り着いた経堂で、植村さんが忘れ物したとゆー店で植村さん、寺田くんと飲む。お金サイスタジオに忘れて一文無しだったけど、ついつい飲む。寺田くんは植村さんを誘ったのであって、私のことはまるで誘ってないけど、「私も行く」と言ったら、「あんたは来なくていい」とまた怒鳴られたけど、気にせず行く。だって稽古場初日だもん。仕込みしたんだもん。飲みたいじゃん。やっぱりさあ。あげくの果てに飲み代は植村さんに、交通費は寺田くんに借りて、命からがら帰還。あーあ。


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