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4月30日 Tue  4月最後の日

 秋公演のための場所を借りる交渉。のち、鉄村さんと会って制作関係の引き継ぎ。引継と言っても引継すべきことというのはあまりなくて、返しものが殆ど。しかもその返してもらったのはよりにもよってカツラ。なんだかマヌケ。今日でホームページ閉めますね、などとお話。そのようにして4月は終わったのだった。

4月29日 Mon  究極の支那ソバ

 朝、というか昼、「ラーメン、ラーメン」と起こされる。我が家の近所に月曜日のみしかも限定50食というラーメン屋があるのだ。前々からその店の存在は知っていたが場所を発見できなかった。それもそのはず、そこは奥さんがやっているスナックの定休日を利用したラーメン屋であるらしい。そう言われて探すと確かにその店「清」は存在した。しかも通常営業のラーメン屋の2階である。せっかく場所も発見したことだし、連休だからやっていないかもしれないけど行ってみよう、と約束していたのを菅原さん(詩森夫)が珍しく覚えていたらしく、たたき起こされたのだ。起き抜けにラーメン。それもどうか。しかし、行く。果たしてこういうことには運のない私たちには珍しくラーメン屋は開いていた。なので当然食べる。起き抜けだけど。食欲、まだないけど。アッサリした醤油味のラーメン。「究極の」というほどではないけど、美味だったわ。

4月28日 Sun  ort拝見

 気持ち良いお天気の中、自転車で永代リバースポットへ。今日から利賀へ行くというort「班女」の稽古を見せてもらいに行ったのだ。初演よりグッと原作に忠実になっていた。するとやはり俳優の仕事というのが出来不出来のカギとなるワケだな。あと「テキスト解析」とか。「解釈」ではなく「解析」ね。
 夜中、フラジャイルの小里くんと長電話。とりとめもなく観念的なお話。私にとっては必要な時間。なんとなくグスグスと進まない新作の、ちょっとした突破口が見えた気がするけど、それは気のせいなのか。

4月27日 Sat  チェルフィッチュのマンション

 岡田くんのチェルフィッチュを観に渋谷のル・デコまで。演目は「マンション」。これがさあ、すごい面白かったんだよねえ。作品としては「団地の心への旅」みたいなもののほうが詩情や物語があって私は好きだけれど、なんといっても、ふたりの俳優が実によく岡田くんのやりたいことを体現してたって言うか、俳優の精度が「団地」より全然上だったと思う。最も俳優は岡田くんが何をやりたいか、なんてきっとぜんぜん理解してないと思うんだけど。やらされてるカンジまで全てが要素として、方法論としてきちんと取り込まれた、なんというか、会心の出来だったのではないだろうか。当人に聞いたワケじゃないけど。
 その後、松岡、皆木くん、ヒロスエちゃん(愛称。本名知らず)と渋谷の町で飲む。皆木くんと森達之の「A」を巡ってちょっとした面白い会話。へえ。ふーん。そーゆーこと考えてるんだ。俳優と話している時にはあまり使わないモードを使ってお話してちょっと新鮮。そして相変わらず自転車で帰宅するのだった。

4月26日 Fri  ばーずあいびゅー

 タービンといっしょに「birds eye view」。ユニークポイントの山田さん、山の手事情社の山田さんなどもいる。最初、タービンとユニークポイント山田さんと赤ちょうちんのような店で飲む。それから山田さんとバーズメンバーが飲んでいる店に移動。入れ替わり立ち替わり席に来てくれたバーズの子たちと今日のお芝居の話など。いつも思うんだけど、スペース107って、入った瞬間、「イメージほど悪くないじゃん」って思うんだけど、観ているうちにどんどん空間が冷えちゃうかんじの小屋なのね。芝居の神様がすんでないっていうか。なんでだろうな。

4月25日 Thu  ワークショップ最終日

 ワークショップ最終日。継続参加を条件にしなかったにも関わらず、全員が継続的に参加してくれたので、今日は最終日らしく創作をつないで一本の作品を作った。もちろん細かく言うといくらでもあるのだが、緊張感が途切れない30分ほどの小品が完成する。ひとつの短編小説から様々な創作。アトリエ公演的にぜひまたやってみたい企画である。それにつけても、この短い期間で飛躍的に技術が向上するということはもちろんないが、例えば「美しく歩きたい」という気持ちを持つことがどれほど人の体に影響するのか、というのを目の当たりにし、俳優教育というのは「美しい歩き方」を教えることではなく、「美しく歩きたい」という気持ちを与えていくことなのだな、とようやく気づく詩森である。なんて言いつつ、とあるところで誰でも美しく歩ける方法(伊東家の食卓みたいで恐縮だが)というの知り、知ってしまったらどうしても実験してみたくなり、実際やってみたらほんとうに誰でも美しく歩けるのでビックリした。どうやるのかって?それは秘密だな。

4月24日 Wed  オルガン・ヴィトー

 寺田くんが音楽を提供しているオルガン・ヴィトーを見にスズナリへ。会場が15分押したのを皮切りに開演も30分近く押し、まあそれはいいんだけど、「ここで10分間の休憩です」と言われた時に、すでに9時だった。でもさすがに2部は1時間くらいかな、と思ったら、終わったら10時45分だった。しかもこの芝居、去年も見た芝居の続編(今回はその芝居と2本連続公演だったけど、今回詩森は続編だけ)なんだけれど、続編と言うより、同じ話だった。多分前の話のネタを拾いすぎたんだと思う。「なんか同じ話のような気がする」と寺田くんに言ったら、「うん、役者も混乱してよくセリフ間違えてる」と言っていた。寺田くんとちょっと飲んで終電で帰宅。

4月23日 Tue  スタイルと物語

 チェルフィッチュの岡田くんのウェブ日記を読んでいたら、スポーツ新聞の見出しになぞらえて、スタイルに相応しい物語とは、ということについて書いてあった。私は今、新作を用意していて、まさにそのことが気に掛かっていたところであった。どう考えても私の得意のフィールドではないほうにないほうに物語が行ってしまうのだ。つくづく考えるだに、最近読んだとある小説に芯までとられていたせいだとようやく気づいた。なのに今日は私はその小説家の別の小説を読了してしまったのであった。その人の小説はいつも空中に放り出されるような終わり方をするので、終わってもしばらくは認識できないくらい、私はその世界に入り込んでしまう。まあ、でも戯曲の方は原因がわかったので、思い切ってここまで書いた部分を消去することにした。パソコン上で5ページなので原稿用紙なら400字づめ20枚くらいだ。その分のセリフと世界、役名までもがデリートボタンとともにパッと消滅する。そういえば、わたしは消滅についての物語を書こうと思っていたのだ。しかし、そういうことを書こうとしたら演劇は小説にぜったい敵わない、ので、やはりここは構想から考え直し、きちんと人間についての話を書こう、と思ったのだった。

4月22日 Mon  偶然の遭遇

 ワークショップ。終わってから庄や風琴工房店で飲み、さあ帰ろうと思ったら隣りの座敷にシャンプーハットの赤堀さんに似た人がいた。確定できなかったので、そのまま帰ろうとしてトイレに行き出てくると、そこに赤堀さんが待っていてビックリした。私を発見し座敷から出てきてくれたらしい。この間日比くんと福田くんに送った感想のFAXを赤堀さんも読んでくれたと言う。あまりいいことは書けなかったのだが、書いた私の気持ちと読んでくれた赤堀さんの気持ちが、実は通じ合っていた、ということがこの偶然の再会でお互いわかり、なのに人見知り同士なので、特に話もはずまないまま、ふたりともなんとなく胸がいっぱいになって立ちつくしているのが我ながらおかしかった。
 店を出て井の頭線のホームに行ったら、向こうからやはりシャンプー出演者のナイロンの峯村さんが歩いてきたのに遭遇した。声を掛けご挨拶したのだが、こちらはもともと話が弾むような間柄ではないので、20秒くらいで話が途切れてしまい、なんとなくふたりでモジモジした。今日はつくづくそういう日なのだと思った。

4月21日 Sun  雨の日曜日

 雨の日が好きだ。それが休日なら尚更だ。なので、今日は近所の図書館以外どこへも行かずに過ごす。昼はトマトのパスタを食べ、夜はチゲ鍋を食べる。久しぶりにビデオを見ようと思い、最初「バウンド」を見たが、サスペンスがとにかく苦手なわたしは途中で神経が持たなくなり(あの程度でと言うなかれ、ほんとにダメなんだよね。シャイニングを映画館で見た時は錯乱状態になったほど)挫折、「リトルダンサー」なんてものを見ることに。これは、イギリス映画っぽい良さに溢れたいい映画だった。こういう小品を撮らせたら、昔はイタリアがダントツだったけど、今はホント、イギリスですね。

4月20日 Sat  アンダルシアにあこがれて

 朝、いつもいく会社の近くのコンビニで、毎日のようになぜか「アンダルシアにあこがれて」(マッチも歌っているけどマーシーのほうね)がかかっている。この歌、好きなんだよな。意味もなく劇的で。その「アンダルシア」の最後の鮮烈な一行。「誰か彼女に伝えてくれよ/ホームの隅で待ってるはずさ/ちょっと遅れるかもしれないけれど/かならず行くからそこで待ってろよ」のところを聞くたび、ある人に伝えたいことがあるのを思い出すんだけど、待っているかどうかもわからないし、伝えることがいいことだ、という確信もないし、結局、そのこととはまるで関係のないメールをたくさん書いて今日という日は終わったのだった。

4月19日 Fri  LABO!「秘密の花園」を見る

 すごく昔からの知人、堀内仁くんのユニットLABO!を久しぶりに見に行く。LABO!って名前に変わったときに鈴江さんの「髪をかきあげる」を見たきりだから、もう4、5年降りになるのかもしれない。仁くんが如月小春さんのNOISEで俳優や助演出をやっていた関係で、NOISEの俳優も中心となって出演している。まあ、いろんな感想はあるし、もちろん不満な点もたくさんあるんだけど、見ていて「舞台を楽しんでるなあ」とすごく思ったんだよね。これは実はなかなかないことなんだよな。最近ニコラ・バタイユの演出論を読み返して非常に感銘を受けたのだが、その中でニコラが「俳優の体が縮こまるようなことを演出はやってはいけない」というようなことを言っていて、それはもちろん尊敬できる俳優との作業を前提としての言葉なんだけれど、仁くんはきっと俳優の体が縮こまらない稽古場を作ることに成功しているんだろうな、とそんなことを思ったのであった。

4月18日 Thu  ワークショップ、ラストスパート

 ワークショップ。3月から始めたワークショップももうすぐ終わり。今日は先日の短編小説から俳優が作った創作をテキストの形にしていく。まだ創作をやっていない組は創作をやってもらう。ふと見ると愛ちゃんがパートナーの横森くんに歩き方指導をしていた。ほんの一年前まで体がダサイことでは人後に落ちなかった愛ちゃんがどんどん洗練された動きを身につけて、しかも人に教えたりできるようになっているのを見ると、ちょっと感慨深い。こんなワークショップは意味がないかもしれないし、意味がないだけならいいけど、むしろマイナスになることだってある、かもしれない。それは指導している私が俳優教育に関してはアマチュアと言っても過言でない以上避けられないリスクだろう。
 今日はそう言えばいろいろ溜めていた懸案事項を一気に片付けたのであった。いい方向に片付いたのでとても嬉しい。それにしても、今年はノンビリしようと思っていたのに、去年よりハードボイルドな後半戦が待っている気がするがきっと気のせいに違いない。

4月17日 Wed  ラー油醤油は餃子のためだけにあるワケではない

 この時期が旬の「根みつば」をざくざく切って、お酒に漬けておいた豚肉と舞茸と塩、胡椒でいためあわせる。最後にラー油、酢、醤油という餃子のタレと同じものを作り、皿にあげたソレにダーッとかける。というのを今日作った。これは美味しい。根みつばの香りとラー油が合いすぎていくらでも食べられる。餃子につけるときよりラー油をちょっと多めにするのがコツといえばコツか。ところで餃子のタレだが、サーチャジャンという調味料を耳かき一杯分くらい足すとどーしちゃったの、というくらい変身する。そんなに安い調味料じゃないし、クセが強すぎて他のことにはあまり使えないのがなんだが、これを覚えてしまうと他のタレでは物足りないほど。一度お試しあれ。

4月16日 Tue  エクリプスとワークショップ

 4時から駒場アゴラ劇場で「エクリプス」という芝居を見る。必要があって自分の芝居に関する企画書を急ぎ作成してから向かったら、エクリプスはついさっきわたしが書いていた企画書から抜け出てきたような芝居であった。もちろんアプローチもストーリーもひとつも似ていないが、町と人間について、そして町が人間の存在にどういう影響を与えるか、ということについての話だというコンセプトが似ているのだ。エクリプスはそのテーマを巨大なコンプリックスとして出現させていた。あのアゴラの空間に町をひとつ作ろうというのだから、タイヘンなことになっていて、見方がわからない、と言っていた人の気持ちもよくわかった。興味深かったが見ていてとても疲れた。そして、ひとりひとりを細分化してみると、例えば浮浪者役の人が圧倒的な肉体の持ち主にも関わらず狂気の説明に終始していたり、全体的にフィジカルな魅力には乏しく、それが残念であった。あれだけ膨大な情報量の中から、自分が見ているところ、というのが、例えば松田弘子さんが説得する相手をキッと見る目とか、ひらたよーこさんがガムを噛んでいる口元だったりするのことが、自覚され、それも面白かった。しかしこの芝居、俳優は面白かっただろうな。
 で、その後ワークショップ。ユニークポイントとの合同ワークショップの2回目。今日は詩森がワークショップリーダーである。詩森と山田さんの演出の差異をハッキリと見せる、ということを最初は考えていたが、それはあきらめて前回山田さんがやったことに継続的に取り組んでみた。継続的に取り組んだ中から見えてくる違いがわたしと山田さんの本質的な違いというものかもしれないとも思う。「knob」だから、ということでヒモと目隠しを用意していき俳優に「縛ってもいい?大丈夫?」とウキウキと聞いていたら、「何よりその嬉しそうな詩森さんの様子が気にかかる」と山田さんに言われた。ええ、まあ自分でもちょっとどうかと思います。

4月15日 Mon   事務の日

 朝から助成金の書類を作る。はじめた頃はさっぱり要領が掴めなくて苦痛そのものだったが、季節がひとまわりし、多少はコツが解ってきた。それにしてもこういうまだ見ぬ公演の企画書を書いていると脳内からヘンな麻薬が出て大言壮語を吐いてしまう。自分が大物になったみたいでちょっとウレシイ。ウレシイが、実際は自分が身を粉して働かないとこの企画もあの企画も実現しないのが現実である。チビ黒サンボに出てくるバターになってしまった虎みたいだ。まあ、こんな話を聞かされてもつまらないと思うので、今日の日記はこれでお仕舞い。

4月14日 Sun  タイプス公演を見る

 ゼロの柩メンバー芝居の最後を飾る新本さんのタイプスを見に行く。演目は「夢の海賊」。素舞台の円形劇場をいっぱいに使い、また殿下役と姫役他のキャスティングが納得のいくものだったこともあって、初演よりずっと完成度の高い舞台だったと思う。でもまあ、詩森は「夢の海賊」にはどうあろうと興味が持てないタイプの人種であり、きちんと作られているだけに、同じ芝居とは言え、私には関係ないものだ、ということがよくわかった。これはもちろんタイプスのせいではなく、趣味の違い、というものである。海賊役の久保田さんは目が完全にイッていてかなり怖かったが、海賊というよりカウボウイに見えたがいかがか。一緒に行った愛ちゃん、松岡、タービンとお茶して帰る。いつも芝居というと(映画でも)ひとりで行ってしまうという「ひとり上手」の詩森だが、今年は「人をなるべく誘う」という習慣をつけてみようと実は決意している。あまり理由はないんだけど。なんかね、いい年して人を誘うのが苦手、なんてナイーブなことではいけないなあ、なんて思ったんだよね。それはさておき、これで芝居ラッシュも一段落。と思ったらまだ来週も2本くらいあるのだった。なんだかなあ。

4月13日 Sat  「9つの怪談」を見る

 今日は義父母を銀座に連れて行き加賀懐石の店で食事などしてから、ザムザ阿佐ヶ谷に俳優座の内田夕夜くんが出ている芝居を見に行く。そしたら「水の中のプール」に出演していた小長谷さんも出ていて大活躍をしていた。振り返ると客席にはortの美術、伊藤ちゃんやら、やはり準レギュラー俳優の三橋嬢、そして小劇場界のアイドル占部嬢までいたのであった。世間は狭い。劇団で手配した飲み屋がいっぱいだったので、一緒に行った寺田くんとふたりで元茶屋。ここの店は10年ぶりくらい。そこでつくづく話したんだけど、実は今日見た、新劇俳優と元梁山泊俳優を中心としたどうということもない怪談集は、そのダサすぎるほどのチラシにも関わらず、結構面白かったのであった。で、何を話したかと言うと、俳優がちゃんと仕事をしていて、演出家がきちんと仕事をしている芝居は、当然だけど面白い。だけど、それが2002年に私たちが見たい芝居というのとは、やはりどこかで違う。というそんな話である。若いクリエイタの時代を見る力と、こういったお芝居に出ているような力のある俳優とか新劇が培った演出術とかがもっと上手く出会うことができれば、きっともう少し演劇シーンもよくなっていくんだろうな、とか、それを分断してしまっているものは何なんだろう、とかそんなことを考えたのであった。
 そんなこんなで終電近くなりヘロヘロと駅に向かうと、そこにはort軍団が。結局一緒の電車で小長谷さんにセクハラを受けつつ帰る。昨日から異常なほど知人演劇人に遭遇している気がするが、きっと気のせいに違いない。
4月12日 Fri  合同ワークショップ

 ユニークポイントとの合同ワークショップの第1回。夏井さんの戯曲「knob」のワンシーンを今日は山田さんが、次回は詩森が演出していく、というワークショップだ。もちろんたった2回ではふたりの演出家の本領発揮などとはなる筈もないし、誰も見たことのない素晴らしい「knob」の世界を構築できる、なんてこともありえない。その差異をなんとはなしに感じ、硬直していきがちな現場を柔軟にしていくひとつのよすがになればいいと思っている。まあでも終わってみると、俳優たちから「どうして2回だけなんですか。せっかくだからもう少し長期的にやりたい」という声があったように、長期的にやると何かが見えてきそうな面白い試みだったのであった。この詩森以外の演出家を迎えての短期ワークショップは来月の紅王国へと続き、チェルフィッチュの岡田くんにも話をしているところである。
 終わって久しぶりに下北沢西口庄や、俗称風琴工房店に行くと、奥のパーティールームでは「セメントデイコウ」軍団が、詩森たちの隣りのテーブルでは紅王国女優恩田真実ちゃんが主宰するダンスグループ「ひよこ組」の人々が飲んでいたのであった。いいッスね。吹きだまりってカンジで。

4月11日 Thu  「セメントデイコウ」を見る

 カメレオン会議の「セメントデイコウ」をスズナリで。この芝居は誰に望まれ、そして、何のためにここにあるんだろう、と見ながらずっとそのことを考えていた。この冷えた空間に対する責任は誰が負うんだろう。プロレスラーの覆面をペルソナに見立て、現代人のアイデンティティーの在り方を比喩として創出させる、そんな劇作上のアイデアを拝見するためだけの芝居なのだとしたら、空しすぎる。
 一緒に行った松岡嬢と久しぶりにゴハン食べつつお話。彼女もお芝居には同じような感想。わたしのようにこの集団に対する思い入れもない分、クールだったけど。渡辺陽介くんを見てもらいたくて連れていったのだが、彼は登場人物中ひとりだけ一度も顔を見せず、覆面のまま死んでいくレスラーなのであった。芝居が終わったばかりで疲れているのに悪いことをしたよ。
 家に帰ったら日比くんから送ったFAXの返事が来ていた。頑張れ。あたしも頑張るよ。
4月10日 Wed  普通の日

 仕事をたくさんする。家に帰る。天ぷらを揚げる。そんなどうでもいい一日だったが、劇団的にはひっそりと大事件がおこっていたのであった。いい知らせだが手放しでは喜べず「どうしよう」とうろたえつつグッタリ。

4月9日 Tue  ヨメとは?

 義父母が来てから初めてマトモな時間に帰り、ヨメ業を多少やってみる。うちの義父母はナゾに満ちた人物たちで、くる度に「宇宙人襲来」という言葉が浮かぶ。まあ向こうもそう思っているに違いない。自分の親でさえ苦手な詩森がましてや人の親なんて得意なワケはないではないか。なので共同体バリバリの「素敵な奥さん」みたいな姑よりは「宇宙人」のほうがずっといい。そんな義父母、舅は「加藤嘉」にそっくりで姑は「スプーンおばさん」そっくりである。だからなんだってかんじだが。

4月8日 Mon  ろばなりに思ふ「女の足の裏」

 昨日までついていたシャンプーハットについて一言。前回見た「蝿男」は傑作であった。ここ数年で見た演劇の中でも私の中での評価はずば抜けて高い。しかし今回の「女の足の裏」はどうだろう。巷間で言われる「わかりづらい」とか「気持ちが悪い」とか、そういう風には、私はぜんぜん思わない。わかりづらい、ということは一切なかった。むしろ狙いが解りすぎて、浅く感じてしまった、ということが問題なのだ。そこにあるのは捏造された狂気であり、イメージとしての狂気であり、狂気の雰囲気でしかなかった。「コア」であるとか「説明を一切排除した」、というような感想を抱く人がもしいるとしたら、それは随分と見当違いなものの見方というかんじが私はする。私には「狂気」に対する説明にしか見えなかった。ひとり分にも満たないやせ細った妄想の井戸を、10人余りの登場人物がひたすらに掘っていくような、そんな貧弱さがあった。
 それが俳優の問題か作家であり演出家である赤堀さんの問題かは私には解らない。多分双方向の問題があるのだろう。緻密に丁寧に作ったことがあからさまなほどに見て取れ、俳優も演出もその緻密さ故、逆に何かを見失ってしまったのかもしれない。「努力しているイメージ」「挑戦しているイメージ」が客観性を剥ぎ取ってしまった、と言ったら、うがった見方すぎだろうか。
 いろいろと書いた。しかし、この日記に書いたことはシャンプーの方にも何らかの形で届けたいと思う。私は次回も多分スタッフとして参加する。別に顔を広げるためとか、そんな理由で参加するわけではない。「蝿男」を見たとき「この若い才能にはとても敵わない」と思った嬉しい敗北感を信じて参加するのだ。そして、この日記を読んでいる人で「女の足の裏」を見たというアナタ。あれがシャンプーハットのベストとは少なくとも詩森は思いません。賛否両論の「否」と感じたアナタにも、ぜひもう一度くらいは見て欲しい。それが願いです。

 そして月曜日はワークショップ。ある作家の短編を渡しての創作。これは創作の精度を問題とするものではなく、創作することによって自分がどういう性格を持つ俳優で、そのことに対して肯定的な評価を自分に対して持っているか、というようなことを考えるための課題である。これは思ったよりうまくいった。私がワークショップを受ける側でも納得しただろう。そんなことは5回に1回くらいしかない。ワークショップは演出家にとっても修行の日々なのである。

4月7日 Sun  シャンプーハット千秋楽

 シャンプーハット賄い最終日。今日は鳥のトマト煮。その後、片付けて打ち上げ。今回ナイロンの峯村さん、新谷さんをはじめとするステキな女優さんたちが客演だったのだが、そのステキな女優さんたちに「ごちそうさまでした」とか「とてもおいしかった」とか、お世辞とはいえいろいろ言ってもらい、嬉しすぎてヘドモドする詩森。新谷さんにむかい「あたし、阿修羅城の瞳、見ました」とか、峯村さんに向かい「あたしチェリーボンバー見ました」とか、つい言ってしまう。そんなこと言われてもみんな困るだろうに。そんなねえ、自分が言われても「で?」と聞き返したくなるようなことを、立場が逆だとつい言ってしまう。人間って弱いものね。そんなこんなで舞い上がっていたら、微妙なところで終電を逃し、タクシーで帰宅。家に帰ると今日から舅、姑が来ているのであった。行くなよ。そんな時に打ち上げに。でもきれいな女優さんと飲みたかったんだもん。なので大満足。なんてことをやっていたら4月の第一週もアッというまに終わったのであった。

4月6日 Sat  ルームルーデンス

 今日もシャンプーの賄い。その後、麻布のディ・プラッツに阿部由輝子嬢ご出演のルームルーデンスを見に行く。今日もまた愛ちゃん、寺田くんがいっしょ。そして怜雅ちゃんも一緒であった。寺田くんと一週間のうち4回も飲んだのは、かなりどうかと思う。そして、昨日と同じネタでネチネチと苛めるのは勘弁してほしい。そのネタとは、ゼロのパンフで次回公演が「2001年10月」となっていたというミスである。これじゃ次回公演は終わっている。人の芝居を見に行くと当然「風琴、次はいつですか?」と聞かれるので、そのたび寺田くんが得意満面に「もう終わってるよ」と答える仕組みである。寺田くんのその手の攻撃にはもう慣れたが、さすがに2日連続は堪える。
 先週の三条会、ク・ナウカもそうだったが、今回も「演出」のみの作品なので、当然「演出」を中心に見ることになる。「演出」とは何をやる仕事なのか。ルームルーデンスはスペクタクルなかんじの劇団だ。うまくいっていないところもあるが、詩森なんかよりはずっとスペクタクルは上手い。というか、詩森はスペクタクルはハッキリ言って下手である。よく「じゃーんってかんじにしたい」とか言っているが、実際にはちっとも「じゃーん」というかんじにならない。堀内くんという知人の演出家が「ゼロの柩」を見て書いてくれたレビューで、演出家には音楽的な演出家と美術的な演出家がいる、と書いていて、詩森は後者であり、美術的な演出家は例えばミュージカルを作っても美術的に音楽を使うという。そして、弱点は時間への感覚だ、というようなことを書いていて、それはとても面白い文章だった。というワケで「演出」である。考える。考え続ける。
 そして寺田くんはまんまと終電を逃していた。詩森家はそこからタクシーで1000円くらいなので「うちに泊まる?」と礼儀として一応誘ってみたが、帰るというので、降り出した雨の中、詩森は自転車。それにしても麻布ディ・プラッツ、地の果てみたいな場所にあるのな。空間はかなり詩森好みなんだけどな。東京タワーがギラギラ光るロケーションもね。いいんだけど。地の利がね。そんなところ。

4月5日 Fri  ネオゼネレイタープロジェクト

 松岡さんが出演するネオゼネレイタープロジェクトを観に相鉄本多まで。寺田くん、愛ちゃん、タービン、ゼロの受付を手伝ってくれた飯塚さんまで大集合。ここ数回のネオゼネの中ではまとまっていた作品だと思うけれど、松岡さんの役が実は宇宙人だったというのには心からビックリした。しかしブラッドベリファンの寺田くんは微妙にオカンムリであった。

4月4日 Thu  ワークショップ

 ワークショップ。4月から参加という人も多いので、今日はまたも基礎の基礎から。すると愛ちゃんや岡さんの進度もわかり、それはそれで意味深い。そして先週できたことが今週もまたできるとは限らない。
 見学に来てくれたチェルフィッチュの岡田くんを含め、ワークショップメンバーで初の飲み会。岡田くんといろいろお話。音楽や映画の話をしたかったけど、お互い相手の芝居の感想だけで手一杯。今度またゆっくりお話しましょう。

4月3日 Wed  「A」

ふと気付くと「A」の再映に行けるのが今日だけと判明し、慌ててアップリンク・ファクトリーへ。「A」はオウム。現「アレフ」。その広報部長である荒木さんを追ったドキュメンタリー・フィルムだ。感想を一言で書くことはできないが、ものすごく感銘を受けた。カメラが指し示すものが自分の視線そのもののようにさえ感じられ、同世代に、こんな風にものを作っている人がいるんだ、と、胸がいっぱいになった。「胸がいっぱいになる」。いったいいつぶりだろう。そんな気持ちは。オウムの側からマスコミや警察、大衆の欺瞞、正義の移ろいやすさを映し出したことがもちろんこのフィルムの白眉ではあろうが、荒木さん、という奇妙に魅力的でクレバーな若者が何故か「サリン事件」に関してだけは回路が分断され、しかもその自己矛盾に気づいているのだが意識化できない、一瞬の表情が印象的で、彼のその後を見届けるためだけにも続編「A2」を見逃せない詩森だ。家に帰るとテレビではパレスチナとイスラエルの出口のない闘争がニュースで流れている。この世界に対して、私は演劇で拮抗していくしかない。遅れてきた世代なんて言っている場合じゃない。ちっとも遅れてなんかないじゃないか。今だ。今なんだよな。

4月2日 Tue  シャンプーハット初日

今日も賄い。30人前の麻婆豆腐。味付けなんか、ただの勘。中華サラダだって、ビネガー1本使い切るくらいの勢いで味付けするのだ。
 ゲネを見せてもらって、本番は受付でウロウロお手伝い。お手伝いとは言っても、今日は歴戦の受付の方がたくさんいたので、詩森はお手洗いはこちらです、とか、そんな補助業務。今回シャンプーはチケットが売れに売れているのだ。今日も超大入り満員。人ごとながらとても嬉しい。見に来てくれた愛ちゃんは帰ってしまったが、やはり見に来ていた寺田くんは行くと言うので、初日打ち上げにお邪魔する。結局夜中まで飲んで終電で帰る。春が来たってそんな毎日。

4月1日 Mon  給食のおばさん

前々から約束していたシャンプーハットのお手伝いに。何をしに行ったかと言うと賄いを作りに行ったのだった。いつも作・演出でありながら、仕込みの合間を縫って賄いを作っている詩森、今回は専門職としての参加である。なにごともまず形から入る詩森としては、日頃家でさえしたことのないエプロンを購入する。すっかりその気。
 買い出しも旅行用のトランクを押して、三軒茶屋の肉のハナマサまでお買い物。肉5キロ、米10キロ、業務用もやし2キロ、豆腐15丁なんていう調子で買っていく。た、楽しい。風琴工房の時は当然本職の合間に行う賄いなので、簡易なメニューであることが必須条件だが、今日はそれだけが仕事なので、とんでもなく凝ったことまで初めてしまう。錦糸卵を焼いたり、スープに鳥団子入れたりね。
 作・演出の赤堀さんがすれ違うたび困ったような顔で、「ごちそうさまです」とか「ありがとうございます」とか言うのが、面白かった。
 夕方からはワークショップ。今日の参加者は2人だったので、「女中たち」をじっくりと。忙しい4月のスタートである。




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