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風琴工房とは

■風琴工房の個性

誰もが言う風琴工房の個性は、詩森ろばの書く物語そしてそこにある言葉です。
文語調のモノローグを主体とした文体は「病の記憶」以降、対話を中心とした会話劇へと移行しつつあります。また、扱う題材が多岐に渡っており、毎回違う劇団を見ているよう、と評されるスタイルの多彩さと、しかし、どのようなスタイルになっても喪われない強い個性との拮抗が風琴工房の特徴となっています。パフォーマンス的なアプローチではなく、あくまで物語に拘り、オーソドックスなウェルメイドでありながらも決して手垢にまみれた表現ではない、それが風琴工房の目指す演劇です。

■社会派と呼ばれて

砂漠の小学校を老人病院になぞらえた「雨の森、砂の国」、
セクシャリティ、ジェンダーという極めて現代的なテーマを
半陰陽という切り口から語った「透きとおる骨」、
少年犯罪を扱った「カスパー彷徨」、
死刑囚の日常について言及した「ゼロの柩」
児童虐待に正面から取り組んだ「紅き深爪」
と社会的なテーマが続いている近年の風琴工房です。
社会派と自ら名乗る意志はありません。しかし「パーソナル イズ ポリティカル(個人的なことは政治的なこと)」という言葉があるように「ポリティカル イズ パーソナル」という逆もまた真であって、その双方に対し、個人であるところの詩森ろばの興味と問題意識は拡がっており、両者に対し、明確な区別をあえて設けません。社会的な問題を社会的な問題として語るのではなく、個人的な問題として捉えなおしていく視点、そのための想像力こそ、今、演劇にもっとも必要な眼差しである、と風琴工房は考えています。

■演劇の死はコミュニケーションの死

演劇は衰退しつづけています。そのことに対し、異論のある演劇人は少ないと思います。なぜ衰退しているか、原因は明らかです。演劇はそれがどんなスタイルの演劇であれ、観客との間に濃密なコミュニケーションを要求します。観客の精神がその濃密さに耐えられなくなっていること、また、逆に観客が要求する濃密さを演劇が提供できなくなってきていること。90年代にはコミュニケーションのない人々の有様を描いた演劇が優れた成果をあげてきました。「演劇」を可能にするために、対話を削り取ることしか演劇を成立させる術がなかったとも言えます。私たちはしかし、敢えて本当の意味での対話とは何か、ということに立ち向かいたいと思っています。コミュニケーションの現場に踏みとどまり、その可能性を観客に向かい、解放していきたいと思っているのです。それは、理想を提示していくことは、現実を写すことと同じくらいに重要な創作の使命である、と考えているからに他ならなりません。

■詩森ろばの視点

詩森ろばが女性性に属する作家である以上、女性的視点から書かれた物語であると評されることに対し、これといった異論はありません。しかし、作品でジェンダー、セクシャリティに取り組んだということもあり、女性的、男性的と二元論的に語られること自体には意義を申し立てたいという気持ちがあります。ロジカルな構成力とテーマ展開、些細な感情を丁寧にすくいあげていく作業。それらを女性的、男性的という言葉で二分化することなく、マクロとミクロを併せ持つ、ニュートラルな視線で世界と対峙していきたい、と風琴工房は願っています。